サザエさんや向田邦子の世界は、いまやプロジェクトXの常連だった
外観もこのとおり普通の人の家、家具も見慣れたものばかりで、電化製品だけがやけに古びて見えた
 昭和25年にはじまった住宅金融公庫の融資を受けて建てられた「最も初期の公庫住宅」を残したい、そんな気持ちから生まれたこぢんまりとした博物館が東京都大田区の久が原にある。「昭和のくらし博物館」という名ではあるが、入ってみると本当にただの「人のうち」。
そう、ここは昭和26年建築の普通のお宅を本当にそっくりそのまま残した(だけに近い)博物館なのだ。

 この家は生活史研究家の小泉和子さん(昭和の暮らし博物館館長)のご実家なのだが、よく「サザエさんの家」「向田邦子の世界」などと評されるそう。最近では「はとバス」のコースにも組み込まれていて、今日も「懐かしの昭和の暮らし探訪」というツアー(佃島住吉神社→台場一丁目商店街→昭和のくらし博物館→東京タワー)のお客さんたちで賑わっていた。お年寄りたちはしきりに「ああ、こういう火鉢で餅を焼いたもんだ」「やけどしたっけな」みたいな思い出話に花を咲かせている。スタッフの方によると、「最近は小学生もよく学校の授業で来て畳をとても珍しがるんですよ」とのこと。東京の小学生は畳が珍しいのか!と隔世の感…うちの家も公開できるかもしれない。


 さて、この博物館、いまやテレビのロケ地などにもひっぱりだこで、最近はNHKの『プロジェクトX』の回想シーンの常連だそう。「昔の貧しかった時代を超えて…」というストーリーが多い番組なので重宝されているとか。昭和26年という敗戦後まもない時期に建てられた庶民の家は、日本人が再生していく歴史の大切な定点を今に伝えている。(みと)