やたらとカフェに行きたがる人がいるが、動機は何なんだろう。恐らく“雰囲気”というのがあるのだろうが、あとは“顔見知りとの楽しい会話”なんてのも、魅力の一つではないだろうか。
お店の人と知り合いになると、食事もグッと楽しいものになる。

そして、私だったらこんな店の常連になりたい。それは、お洒落タウン・下北沢で営業しているカフェ「犬拳堂(いぬけんどう)」。このお店は、店内に流れる1960年代からの貴重な格闘技の映像を楽しみつつ、オーナー自慢の料理に舌鼓をうてるという、格闘技ファンには夢のようなお店。

そこで私も、個人的な興味を兼ねつつ、「犬拳堂」に遊びに行ってきました。お店に入ると、いきなり飛び込んでくるのはカウンターにかけられているボクシンググローブ。

他にも、力道山のポスター(本物!)など貴重なレアものポスターたちが。

このカフェのオーナーは、犬竹けんぢさんという漫画家。「ミスターマガジン」(廃刊)という漫画誌が主催した「弘兼憲史賞」を2回、「ちばてつや賞」を1回受賞したことのある実力者。
特に、「ちばてつや賞」を受賞した際のドラマは泣ける。「ちばてつや賞」受賞作のタイトルは『おきあがりこぶし』。このマンガのストーリーは、『あしたのジョー』の主人公・矢吹ジョーが生きていたら……というもの。
パンチドランカーがボクシングに復帰する、というシチュエーションで描いたヒューマンドラマ。「このマンガをご本人に見てもらいたい!」と熱い思いで描き上げた1作で、それが見事「ちばてつや賞」を受賞したのだ。美しい!

ちなみに、このカフェを下北沢にオープンしたのにもワケがある。実は下北沢にある“茶沢通り”は、全国でも有数の格闘技ロード。ボクシングの名門「金子ジム」や、K-1のカリスマ・魔裟斗が所属する「シルバー・ウルフ」、アクション俳優・倉田保昭さんが主宰する空手道場「創武館」など、多くのジム・道場が軒を連ねている。
そんな街なのに、格闘技をテーマにしたお店が存在しないことに気づいた犬竹さんが、今年の8月2日に「犬拳堂」をオープンした。


そして、お店で出される料理がこの店ならでは。かつて、ご自身もキックボクシングのジムに所属しており、その時期にコックの修行もされていた犬竹さん。当時、ジム仲間に振舞っていた料理がメニューとして出されている。
お店のイチオシは「焼チーズカリー」(1000円)。これは犬竹さんが考案したオリジナルメニューで、ジム仲間からは“伝説のアジアンカリー”と呼ばれるほど好評だった逸品。
早速、私もいただきました。
三種類のカリーの種類があり、私が選んだのは「トマトとなすのチキンカリー」。これがウマい! 伝説の名に恥じぬクオリティ。トマトが効いてて、秒殺で完食してしまいました。辛さは5段階あり、私がいただいたのは下から2番目の辛さなので、スゴく食べやすかったですよ。

このカフェには、他の格闘技カフェにはない特典が。それは、格闘技をやっている人を対象にしたサービス。
自身が所属する格闘技ジム・道場の会員証を提示したお客さんには、もれなく100円キャッシュバックされる。
会員証を提示すれば、先ほどの「焼チーズカリー」も900円でいただくことができるのだ(2品以上オーダーの方のみ100円キャッシュバック。また、この店の会員になれば、同様に100円キャッシュバックされる)。

ということはやはり、この「犬拳堂」は格闘技を“やる側”の方の来店率が高い。
選手が格闘技を引退すると、皆バラバラになり、顔を合わせる機会がどうしても減ってしまう。そんな人たちの集まる場所にしたい、そんな思いが犬竹さんにはある。
実際、今ではボクシング、キックボクシング、シュートボクシング、空手、柔術、総合系など、様々な選手(元選手)たちのジャンルの垣根を越えた交流が、このお店で交わされているそうだ。
もちろん、格闘技を“観る側”の人たちの来店も大歓迎。店内には、マニア垂涎の格闘技映像が用意されており、私もカリーを食べながら思わず声を上げてしまいました。

そして、犬竹さんの目標として「格闘技マニアだけで盛り上がる店にしたくない」という強い願いがある。純粋なカレー好きの人にも来店してもらいたいそうで、店内に用意されている映像には格闘技ものの他に、「ひょうきん族」や「タケちゃんの思わず笑ってしまいました」など、マニア垂涎のバラエティ映像も。格闘技の門外漢も存分に楽しめるラインナップである。こりゃ、たまらん!

店内BGM用CDには“ラモーンズ”、“INU”、“セックス・ピストルズ”などパンクの名盤も並ぶ。
犬竹さんが提唱する“格闘技”、“お笑い”、“パンク”、“カレー”という四大要素が揃ったカフェが、この「犬拳堂」なのだ。

私の「たまに行くならこんな店」は、今日からこのカフェに決まりですよ! 今スグ、常連に立候補したいです。
(寺西ジャジューカ)