いつからか、宇宙に対して憧れを持つようになっていた。恐らく、高校時代にデヴィッド・ボウイの名作『ジギー・スターダスト』を聴いてから。
「火星からロックスターが地球にやって来る」というスペイシーなコンセプトにやられてしまったのだ。

だからこそ、この試みにはポーッとしてしまった。鹿児島大学と鹿児島県内の酒造会社12社が共同開発し、1月27日に発売したのは『宇宙だより』なる焼酎。
「宇宙」というワードが商品名に付けられているが、それは伊達ではない。何とこの焼酎、昨年の5月16日に打ち上げられた米スペースシャトル「エンデバー」に搭載され、宇宙を旅してきた酵母とこうじを用いて製造されたというのだ。

これは凄い。
宇宙から帰還した微生物によって生まれた焼酎。スペイシーなお酒じゃないか!
そこで、このような宇宙規模の焼酎を製造したきっかけについて聞いてみた。伺ったのは今企画発起人の一人、鮫島吉廣教授(鹿児島大学焼酎製造学研究室)である。
「鹿児島には宇宙基地が2つ(種子島、内之浦)あり、“宇宙に近い県”です。また、当大学も、宇宙に関する研究が日に日に前進しております。一方、鹿児島には日本一酒蔵が多い、それもすべて焼酎工場という特徴があります。
そんな大学の特性と地の利を活かし、『宇宙だより』製造に着手しました」
なるほど。上記のような特別な環境を頼りに、2年前に企画はスタートしたようだ。

では、宇宙での生活ぶりについて。宇宙旅行の当事者である“酵母とこうじ”の環境に関してである。注目の酵母・こうじは、エンデバー内で固定された箱の中に16日間密閉され、そのまま保存されていたそうだ。……それって、微生物にはどのような影響があるのだろう?
「酵母・こうじは乾燥した状態で打ち上げられておりますので、我々も『大きな変化はないだろう』と推測しておりました。
ただ、完成した焼酎を飲むと、全く変化がないというわけではありませんでした」(鮫島教授)
1月13日に鹿児島大学で開催された試飲会では「キレが良い」、「熟成された感じ」といった反響が寄せられた模様。鮫島教授自身、「香りに“華やかさ”が出てきた」と感じたそうだ。その要因についてはまだ何とも言えないが、宇宙を旅したことにより“夢”と“ロマン”が乗っかったと私は考えたい。それが焼酎に影響した……、と。

ちなみにこの『宇宙だより』は1月27日からの発売開始となっており、現在は予約受付中。全国の酒店や大手デパートで販売される見込みだ。
価格は900ミリリットル12本が1セットで、20,400円(税込み)。2000セットの限定販売となる。

それにしても「宇宙」と「焼酎」、予想もしなかったコラボレーションではないか。今まで夢でしかなかった、おとぎ話のような試み。
もう、ウズウズする。宇宙ってどんな所なのか、じっくり話を聞いてみたい。
そして、それは『宇宙だより』が教えてくれる。その味に、宇宙の息吹が表れているに違いない。
(寺西ジャジューカ)