以前、「会社を設立し、自身がデザインしたネクタイを発売する女子高生」の取材をさせていただいたことがある。若くして確固たる目標を見つけ、その目標に向かい邁進する姿には美しいものがあった。


そして、またしても新たな情報が! 現在中学1年生の米山維斗君は、小学6年生であった昨年の7月20日に「ケミストリー・クエスト」(神奈川県相模原市)なる会社を設立。そして同年の10月には、カードゲーム『Chemistry Quest ケミストリークエスト』の発売に漕ぎつけたというのだ。

事の経緯はこうだ。小3の頃、学校の同級生が自作の紙製“神経衰弱”を楽しんでいるのを見て「自分でも何かカードゲームを作ってみよう」と思い立った米山君。その際心掛けたのは、「戦うような内容ではないゲームを作りたい」というものであった。
ここで活かされたのは、米山君の知識。
実は彼、幼稚園の頃に天文学に興味を持ち、小学2年生で古生物学に熱中するという早熟少年なのである。そして当時の米山君の興味は、「化学」に向いていた。

だからこそ、開発されたのは以下のようなルールのカードゲーム。
まず人数は、1対1の対戦型で行う。カードは計70枚あり、それを2人で半分ずつに。カードには「水素」「酸素」「窒素」などの原子が描かれており、それをお互い3枚ずつ並べる。

そこからジャンケンをして先攻と後攻を決定。ジャンケンで勝った方が相手が並べた原子カードから数枚をもらい、自分の並べた原子カードと組み合わせて分子を作る。これを交互に行っていき、どちらかのカードが無くなったらゲームは終了。勝敗は、お互いのカードの数を数えて、多かった方の勝ちである。
例えば、先攻が水素2枚と炭素2枚で「アセチレン(C2H2)」を作り、後攻が水素、窒素、炭素を1枚ずつ組み合わせて「シアン化水素(HCN)」を作ったとする。という事は、3枚のカードを使った後攻より、4枚のカードを使用した先攻の方が有利になるわけだ。

どうでしょう? ルールは、いたって簡単。しかし、このゲームを楽しんでいくうちに化学の知識も蓄積され、いつの間にか勉強になっていると思うのだ。

そんな、この『ケミストリークエスト』を家族や友人との間でのみ楽しんでいた米山君。しかしある日、父親と親交のあった「株式会社リバネス」にカードを見せると、いきなりの新展開。思いもよらないリアクションが返ってきた。それは「会社にして発売した方がいいよ!」というアドバイスである……。

そうして昨年(小学校6年時)に会社を興し、その3か月後にゲームの発売に至ったというわけだ。いやはや、若くして。

そんなこんなで商品化された、このカードゲーム。現在は「幻冬舎エデュケーション」が販売を担当し、全国の書店等で購入することができる。価格は1,500円(税込み)。

ちなみに、米山君の今後についても伺ってみた。
将来もこの会社をずっと続けていくつもりなのか、他に何か目標があるのか……?
「会社をやり続けて、それでできたお金で科学を研究していきたいです」(米山君)
このような考え方、日本ではあまり馴染みがないものだが、アメリカでは珍しくないという。しかし、しっかりしたビジョンだな……。

素直に、その才能がうらやましい。科学の道に進みつつ、ゲームの世界にも携わり続けるという多彩っぷり。
現在、彼は『ケミストリークエスト』のスマートフォンアプリと、素粒子をテーマにしたカードゲームを開発中だそうです。
(寺西ジャジューカ)