先月、東京駅のリニューアル記念におこなわれた3Dプロジェクションマッピングが話題になった。3Dプロジェクションマッピングとは、立体物にプロジェクターで映像を投影する技術のこと。
ニュースでその美しいショーを見た人も多いのでは? 

最近は世界各地でおこなわれているプロジェクションマッピングだが、すでに何年も前からこの技術を使ったユニークすぎる作品を手がける有名人がいる。スペインのクリスティアン・エスクリバ・トロニア氏だ。

エスクリバ氏の職業はパティシエ。つまり、菓子職人。それゆえ彼がスクリーンとして使うのは、東京駅のような建築物ではなく、なんとケーキ。ウエディングケーキのような特大サイズのケーキに映像を映し出してしまうのだ。


先月、都内で世界各地の一流シェフが集まるイベント「G9 東日本大震災復興支援+TOKYO TASTE 2012」が開催。エスクリバ氏も来日し、その技術を披露した。

「未来のケーキ」と題したデモンストレーションでは、3Dプロジェクションマッピングを使って、立体のケーキにプロジェクターで映像を投影。かわいらしい映像と共に七変化するケーキはまさにファンタスティック! 

もちろん、見て楽しむだけじゃない。ケーキの背面には実際に食べられるものを作っておいて、映像を見終えたらケーキを裏返してそれをゲストに配る……なんていう、いわば4D的なことも実現している。また、本当のウェディングシーンであれば、結婚式に参加できなかった人から携帯でメッセージを送ってもらい、それをケーキに投影する、なんてことも可能だ。


このプロジェクションマッピングに限らず、エスクリバ氏の作品はどれもアイディアに驚かされるものばかり。たとえば食べようとしたケーキがいきなり爆発する「爆発ケーキ」。まるでコントのようなケーキを本当に作っちゃうのが彼のスゴイところ。もともとは家族を驚かせるために作ったそうだが、各所で評判になり、パリの現代美術館のオープニングでも使われたとか。

また、あるパーティでは「食べることが可能な壁」と題して、メレンゲベースの壁を製作。集まったゲストにスプーンを渡して直接それを食べてもらう演出も仕掛けた。
ほかにも「動くケーキ」と名付けた火を吐くドラゴンのボディにお菓子を差してゲストが自由に取れるようにしたり、「食べられる風景」をテーマにお菓子で作ったサーキットにミニカーを走らせたり……。どれも単純な料理や製菓の枠を超えている。

エスクリバ氏いわく、
「こういうものが作れますか? と聞かれたら、できないということはない」
とのことで、時間とお金さえあればなんでも作ってくれるそう。ちなみに彼の作品で一番有名なのは、アメで作った指輪「キャンディリング」。2003年に発表され、いまや世界16カ国、600カ所で販売されている。

もちろん、奇想天外なことばかりしているわけではない。
バルセロナにある菓子店「パステレリア・エスクリバ」の4代目でもあり、同店では日常食べられるケーキが売っているのでご安心を。

それにしても本当に驚きの連続だったエスクリバ氏のデモンストレーション。どんどん進化する料理の世界に比べると、スイーツはまだオーソドックスなスタイルが主流だと思っていたが、最先端ではここまでやっているんですね。
(古屋江美子)