ファッションやヘアスタイルに流行り廃りがあるように、ビジネスのスタイルや技術、マーケティング理論、アート、言葉、ダイエット法や育児法、学習指導法などに至るまで、あらゆるものに流行り廃りは存在するように思う。

では、「エロ」にも流行り廃りはあるのだろうか。

ときどき「熟女ブーム」「巨乳ブーム」なんてものが起こるけれど……。
エロマンガ雑誌編集者に聞いたところ、次のような説を聞かせてくれた。

「グラビアには流行り廃りが明らかにありますよね。たとえば、『バストと景気』の関係はよく指摘されていて、バブルの頃にはイケイケでスレンダーなタイプがもてはやされたのに対し、不景気になると巨乳がもてはやされるというのはよく言われること。世の中が元気をなくしているときには、癒しとして豊かな胸を求める傾向があるようです」
ただし、グラビアの傾向と、本質的なエロの需要とは、また別モノだという指摘だった。
「エロは、流行り廃りがあるというよりも、細分化だと思います。
たとえば、熟女ブームなど、一つ人気のテーマが出てくると、ただ熟女というだけでなく、シチュエーションやテーマ性などがそこからさらに細かく枝分かれしていって、ものすごいペースで細分化して広がり、増えていくんですよ」

一方、官能小説編集者は別の持論を展開してくれた。
「エロにもやっぱり流行り廃りはあると思います。ただ、本質的に人の性嗜好は変わるものではないので、あくまで表面的なものであるかと。たとえば、ロリ好みが、突然熟女好きになるとか、まずありえないわけで」
個人の性嗜好はあくまで流行り廃りがなく、普遍的なものだが、社会的には「ブーム」になるものがあるという指摘だ。
「ブームになるエロって、社会的に言い訳しやすいものに限られていて、わかりやすい例で言うと、SMなどがあります。ボンテージとかムチとか、ファッションとしてカッコいいとか笑えるとか、言い訳がしやすいんですよ。
ところが、これがロリータとか痴漢とか、犯罪傾向が強いものになると、言い訳のしようがない。そうなってくると、本当にそういう嗜好があっても公言できないから、隠すしかないですし、ウケ狙いでも言いづらいですよね」

「ブーム」になるエロは、「言い訳」が成り立つもので、ビジネスにもなるが、公言できない個人的嗜好は、もっと根が深いものということか。
「ただ、エロも社会的に許容される範囲は日々変わっているので、そこを探りながらOKの部分が判明すると、ブームが起こるのではないでしょうか。一昔前のヘアヌードブームとか、まさにそんな感じだったのでは?」

エロの流行り廃りも、ファッションなどと同様に、誰かしらが仕掛けているのかもしれない。ただし、ファッションなどに比べ、個人的な嗜好が何より色濃く存在するものだけに、ターゲットが狭く、「言い訳」のラインを探ることも簡単じゃなさそうだ。
(田幸和歌子)