芸能人の整形疑惑が話題になることがある。そしてスッピンが公開されれば、たちまち「本当にスッピンなのか」が怪しまれる。
彼氏にはスッピンと言いながら、隠れて眉毛を書き足してしまう事実。メイクはスッピンを隠す女性の秘め事だが……。読者モデルのメイク前・メイク後のひょう変ぶりで話題の本がある。ファッション誌「S Cawaii!」(主婦の友社)が特別編集する「気づいたら誰でも読モ以上の顔になれるメイクBOOK」だ。3カ月で18万部を売り上げる好調ぶり。

のっぺりした魚顔、サル・ゴリ顔、パーツが小さいとり顔などと、悩み別にメイク方法が掲載されているが、「そこまで言う?」と実際、言われると落ち込んでしまいそうなタイトルがずらりと並ぶ。


同社第3編集部美容・ファッション編集の田村明子さんに話を聞くと、実際に読者モデルがメイクで普通の女の子から変貌していく姿を目の当たりにして、とにかくこの素晴らしいテクニックを伝えたいと思ったのが同本制作のきっかけになったという。
「街で綺麗な人を見つけても、顔の作りが違うと諦めてしまいがちですが、実際は、努力の末に身につけた職人級のテクニックで作り上げている女の子もいるんです。それを知ってもらうことで、コンプレックスを抱えたまま諦めている女の子たちを救えると思ったのです」

読者モデルの皆は、ガチのスッピンに抵抗がなかったのだろうか?「撮影現場では、自分のスッピン写真を見て『マジヤバイんだけど!』と楽しんでいる様子です。ただ、スッピン写真を撮る際にちょっと目を離すと、カラーコンタクトを入れて可愛く写ろうとする子もいます。
女の子として当然の行動ですが完全にスッピンでなければ、より多くの女性に勇気と努力するきっかけを与えられないので、そこは意図を説明し協力してもらっています」。たくさんの女性に自分たちのように変われることを知ってもらいたいと、スッピンをさらけ出す彼女たちの勇気に敬意を表したい。


彼女たちのメイクは整形しなくてもコンプレックスが解消できるということで「整形超えメイク」と呼ばれる。「彼女たちは、まず鏡で自分のスッピンと向き合って、今日はどんな顔にしたいかイメージしながらメイクしていきます。何度も会っている子でも、ファッションに合わせて『顔を変える』ため、一瞬誰か分からないこともあるほど」。彼女たちのメイク時間は20分から30分と意外に短い。

「彼女たちのすごい点は、普通の人なら無理だと諦めてしまうコンプレックスも、あらゆる荒業を駆使して打破してしまうところ。それを目の当たりにすると、日本の職人気質を脈々と受け継いでいるような気がしてきます」。
ギャルのメイクと侮ることなかれ。そこには彼女たちの勇気と努力、メイクに対する半端ない愛情が詰め込まれている。

読者層の多くは20代ということだが、アラサーからアラフォーまで幅広い読者がいるそうだ。「自分の顔を研究対象としてあらゆる技や商品を試し、理想形を作り上げていく読者モデルたちの美的向上心の高さには脱帽します。ある読者モデルが言った『常に今日が一番可愛い自分でいたい』という言葉が印象的でした」(田村さん)。いくつになっても可愛くあり続けたいという思いは誰にでもある。
メイクを全部取り入れられなくても、いくつか参考にしたいというアラサー、アラフォー世代が多いというのもうなずける。

同本のメイクは、『ギャルの整形メイクの集大成』だと田村さんはいう。「ギャルがかつてヤマンバだった時代、黒ペンのマッキーでアイラインを描くといった失敗をへて、よりナチュラルに可愛く見える『整形超えメイク』を追求してきた結果です。ここには、ジャンル、テイスト、さまざまな世代の人にも応用できる、素晴らしいテクニックが詰まっています。単純なポイントを知るだけで、ここまで変わることをぜひ実感していただきたいです」


同本に登場する読者モデルのメイクビフォワー・アフター動画は、約40万回再生されSNSで話題となった。また、ビフォワー・アフターが掲載された電車広告などを見て、女性の「私もメイクを頑張ろうと思った」「勇気が出た」という感想に対し、男性は「怖い」「女性不信になる」という声があるという。
だが、化粧という仮面をかぶり、いつまでも可愛く綺麗でいたいと日々、努力を怠らない乙女心を分かってほしい、海のような広い心で。

読者モデルになりたいとメイクの研究を重ね、約1年に渡り応募し続け読者モデルになった子もいるという。自分に似合うメイクを知り努力し続ける女の子たち。単に「隠す」メイクではなく、「自信がもてる」メイクで変わるきっかけを伝えたいという女の子たちの職人技に注目してほしい。
(山下敦子)