夏祭りや秋祭りなど、外に出ると神輿を担ぐ元気な子どもたちの姿を見ることがある。
汗をキラキラと輝かせ、大きな掛け声をあげて、彼らは進行方向だけを見て歩みを進める。
「あんな時代もあったっけなぁ~」と、コンビニで買ったビールを片手に家へ帰る。

私が小学生の時分、何を考えて過ごしていたのか、友達と何をして遊んでいたのか、もう殆ど思い出せない。今の子どもは何を考えているんだろうか。そんなことを思っていた時、この本を見つけた。
彩図社より発売されている「6歳男児のツイッター」だ。

5歳からTwitterでつぶやいている、村田花侍(はなじ)君、通称ハナチャンの日々のつぶやきを1冊にまとめた本だ。

開いてみると、最初のつぶやきはこうだ。
◆「あと2かいねたら じてんしゃがとどくよ たのしみでたまらないの」

か、可愛い……。普段子どもと接する機会がないため、何かを楽しみに待つ子どもの表情を見ることもないのだが、きっとハナチャンはニコニコして、ソワソワして、自転車を待ちわびているのだろう。なんて可愛いんだろう。想像しただけでもキュンキュンするほど可愛い。

その翌日のつぶやきはこうだ。

◆「あしたは自転車がくるから楽しみだけど今日はそうじゃないからがっかりな日」

あと1日待つだけで自転車が届くというのに、前日というだけで「がっかりな日」になってしまう。そういえば、子どもの頃は時間が経つのがやけに長かったような気がするなぁ。

そして、ようやく自転車を手に入れたハナチャン。早速自転車を乗りこなすのに苦戦し、こんなつぶやきをアップしていた。

◆「ん~ん~ぐう~!!  いくらくふうしてもうまくできない! こんなの坂曲線レールじゃなくてバカ曲線レールだよ!」

ハナチャンのつぶやきを通して、子どもの素直さやリアルな感情に触れることができる。こんな面白い本書を刊行するに至った経緯を担当編集者の本井さんへ伺ってみた。


「村田花侍君のお父さんは十年来の私の友人でして、先日、花侍君のお父さんと話をしていたとき、『花侍のつぶやきをTwitterで投稿している』という発言がありました。早速、Twitterを見てみたところ、子どもならではの独創性かつ詩的な言葉の数々が活き活きと綴られており、一瞬で花侍君のファンになりました。『子どものつぶやきというのは独特で面白い』という感覚を持っている人は多いと思うのですが、まさに花侍君のTwitterはそれを体現しているものだったのです。『これは面白い!』と感じ、花侍君、そして花侍君のお父さんの許可を取った上で企画会議にかけたところ、傑作つぶやきに爆笑が沸き起こり、出版が決まりました」

確かにハナチャンのつぶやきは面白い。突発的なものも多く、つぶやきの前後に何があったかは分からなくても、たった一言のつぶやきでも爆笑してしまうものもある。
ここでちょっと紹介してみよう。


◆「かあかのつくるごはんはハナチャンにとってさいこうだな!みためはゴミみたいだけどおいしい」
◆「おっさんになったら しんばしでうろうろしたい」
◆「ひげをそったのに、あごがくろい チチは、あごくろばかやろうだ」
◆「わたしははんにんではありません わたしはただのびんぼうです」

こんなに面白いつぶやきの合間、「本当に6歳の子がつぶやいてるの?」とゾクっとしてしまうようなつぶやきもアップしている。

◆「こんなことで いいおとなになれると思わない」
◆「おんなは正しいけど、すぐになく」
◆「チカラじゃない、コツだよ」

もうハナチャンじゃない。花侍先輩と呼ばせていただきたいくらいにカッコいい。
こういったつぶやきの他、飼っているインコの「くれよん」が鳥かごから外に出てしまい、ハナチャンが必死に探す中、くれよんを想ってつぶやいた言葉は思わず涙が出てしまう。
また、Twitterでつぶやいたものではないが、本書にてハナチャン自作の詩が掲載されている。
これは、ハナチャンが5歳の時にスーパーの帰り道ででたらめに口にしていたことをお父さんが書き留めていたものだそう。
実際に読むと、リズム感があり、とても面白い、子どもらしい詩だと思ったのだが、子どもというのは真理を悟っているんだろうか、と思わせられるような、どこか凄みのある詩だった。

もう自分が子どもに戻ることは出来ないけれど、本書を読み、子どもの視点というのを感じてみることで、忘れていた純粋な気持ちをほんの少し取り戻せるかもしれない。
(薄井恭子/boox)