ゲームファンでその名を知らない人はいない、「ロマンシング サ・ガ」シリーズ。1992年にスクウェア・エニックスからスーパーファミコン用のコンピューターRPGとして発売されて以来、その対応機種を携帯アプリやWii、WiiUなどへと広げ、現在も根強い人気を誇っている。


ゲームデザインやシナリオは「サガ」シリーズの生みの親と呼ばれる河津秋敏氏が、バトルデザインや独創的なアイデアの数々は小泉今日治氏が手がけてきた。

さらに、ゲームの世界を作り上げるうえで大きな役割を果たす音楽は、『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)のサウンドをはじめ、数多くのゲーム音楽を世に送りだしてきたゲーム音楽界の騎手・伊藤賢治氏が担当。またキャラクターデザイン・イラストを担当する小林智美氏の繊細な描線は、美麗な空気をまとった世界を確立してきた。

このように一流制作スタッフが作り上げてきた「サガ」の世界。なかでも、サウンドとビジュアルの強烈な融合は長い間ファンの心を掴んできた。

そんな伊藤賢治氏と小林智美氏のコラボレーションが、「サガ」シリーズ以外で実現したと話題を呼んでいる。
ヴィジュアル系ロックバンド「摩天楼オペラ」が2014年9月3日にリリースしたアルバム『AVALON』は、この強烈なタッグが加わることで壮大な世界観を実現させた作品だ。

・異色のコラボレーションを堪能せよ!
では、イトケン×小林智美がコラボレーションした「摩天楼オペラ」とは、一体どんなバンドなのだろうか。2007年に結成され2010年にメジャーデビューした摩天楼オペラは、シンフォニック・メタルやシンフォニック・ロックを基調に、ヘヴィなメタルサウンドと現代的なデジタルサウンドに、美しいオーケストラや合唱が混ざり合った独自のスタイルを確立している。

メンバーはヴィジュアル系バンドには珍しくキーボードを含む5人体制。キーボーディストの彩雨(あやめ)氏は慶応義塾大学環境情報学部で学び、楽曲制作やライブパフォーマンスにITを駆使することで有名。『週刊アスキー』や『Mac Fan』での連載や、京都コンピューター学院および京都情報大学院大学の客員教授としても活躍している。


またボーカル・苑氏の超ハイトーンボイスと歌唱力や、現在のヴィジュアルシーンからは頭一つ、二つ、飛び抜けている楽器隊のハイレベルな演奏技術は各所で高く評価されており、メタルファンを中心にコアな男性ファンが多いことも特徴だ。

今年の8月にはアニメ『進撃の巨人』でも話題となったバンド「cinema staff」や、アニメソング界を牽引しつづける「angela」との対バンを成功させ、10月からスタートするアニメ「オレん家のフロ事情」(BS11ほか)ではオープニングテーマを担当するなどジャンルの型にはまらない活動が注目を集めている。

そんな摩天楼オペラがメジャーデビュー3枚目、1年6カ月ぶりにリリースしたアルバムが『AVALON』は、“劇的ロック”というキャッチコピーを携えた「ロマサガ」ファンにも必聴の仕上がりとなっている。

アルバムの1曲目「journey to AVALON」はキーボード彩雨氏と伊藤賢治氏がコラボレーションした共作で、アルバムの壮大な世界観が1曲に凝縮された楽曲。また、初回プレス版の外箱ジャケットには小林智美氏が描き下したイラストが起用されており、「ロマサガ」の世界を彩ってきた小林の技巧が遺憾なく発揮されている。

・初の野音ライブも開催予定!
もちろん、両アーティストとのコラボレーションだけでなくアルバム全体を通して“アクの強い”実験的な音作りが追及されていることも魅力だ。


かねてからアルバムに収録されてきたギターメインのインストゥルメンタル曲は今回も健在。また2014年の春ツアーからライブで披露され、ファンが音源化を心待ちにしていた「蜘蛛の糸」「天国の扉」、そして先行公開され国外からも絶賛の声が上がっていた「天国の在る場所」も収録されている。

ファンの期待を良い意味で裏切り、さらにジャンルの壁を超えて新たなファンも獲得するであろう、重たく、疾走感がある1枚となっている。

9月17日(水)のTSUTAYA O-EASTを皮切りに、今秋『AVALON TOUR』ツアーの開催が決定している摩天楼オペラ。全国ツアーのラストは、10月18日(土)の日比谷野外音楽堂にて開催される予定だ。

CDの魅力を凌駕する圧倒的なライブパフォーマンスを、ぜひ目の前で体験してみてほしい。

(はなふさ ゆう)