ライターとしてどうかと思う問題なのですが、私はキーボードの打ち込みが遅いです。本当に遅い。
もちろん、ブラインドタッチできません。でも、なぜ遅いのだろう。いや、練習が足りないのはわかり切ってます。それ以外で、何か外的要因はないのかしら? 

……ありました、原因。とにかく、余計なキーが多過ぎる。「S」や「K」や「Enter」辺りは頻繁に使うのに、「Q」なんてほぼ使ったことがないもの。
そう言えば、「End」なんて一度も使ったことがない! まとめると、私の考え方はこうです。キーの数を絞れば、ブラインドタッチできるかもしれない。そうすれば、打ち込みの速度も上がるはず。

というわけで、コレをご紹介しましょう。「株式会社キビテク」(東京都新宿区)が開発した『Trickey(トリッキー)』は、自分好みの配列でコンパクトにカスタマイズできるキーボードであります。では、まずは画像をご覧いただきましょうか。
……ね? すっごい、コンパクト。これ、必要最小限なキーだけで構成されているんです。それらを打ちやすい場所に配置し並べていくと、こういうキーボードになる。

東大生が作った必要最小限のキーを配列できるキーボード
必要最小限なキーだけで構成!


ところで、このようなキーボードを製作した経緯は何ですか?
「パソコンゲームをやっている時に湧き上がった『自在にキーを配置したい』という思いが、開発の原点でした」
お答えいただいたのは、同社スタッフの城氏。なんと、現役東大生であります。実は「キビテク」という会社自体、東大出身のロボット研究者が設立したベンチャー企業だそう。
今回の『Trickey』開発は、講義の自由制作課題として取り組まれ誕生したツールなのです。

東大生が作った必要最小限のキーを配列できるキーボード
開発者の城啓介氏。工学部に通う現役東大が、講義の課題として製作した。


そして注目は、城氏による“開発の原点”。学生らしく、ゲーム時の使用が最初の目的でした。この流れで、実用性についてを探っていきたい。『Trickey』って、どんな用途に最適なんですか?
「キーの自由な拡張や組み換えが可能なので、お好みのキー配列にしてゲームに特化させたり、ショートカットを登録して作業効率を上げるのに最適です。ショートカットしか使わない職業の場合、キーボードが必要最小限のスペースに置き換わるのでデスクのスペースをより広く使えます」(城氏)

ここで注目は、配列の仕組みについて。
通常のキーボードの場合、打ち込まれる文字は“位置”で記憶されることがほとんどです。その箇所のキーを打ち込むことで、作業は進んでいく。一方、この『Trickey』の場合、キー一つ一つの中に小さなコンピューターが入っており、それぞれが自分の文字を覚えています。結果、「A」をどこに配置しても、そのキーは「A」として機能する。
「キーはPC上のソフトウェアから何度でも書き換えることが可能で、単一のキーで Ctrl+Z のようなショートカットを作ることもできます」(城氏)

なるほど、意義が見えてきました。このキーボードを使用すると、こんなメリットがあります。

●ペンタブレットとキーボード両方を置く必要のあったイラストレーターの作業環境を簡略化することができる。今まで二つの指での操作が必要だった Ctrl+Z などのショートカットキーも単一のキーで押すことができるようになり、より感覚的な作業が可能に。

東大生が作った必要最小限のキーを配列できるキーボード
ペンタブレットと『Trickey』を併用中。ショートカットを単一キーで行えます。


●ゲーマーは今まで、必要のないキーが含まれたフルサイズのキーボードを使わざるを得なかった。『Trickey』ならば省スペースが可能になるし、「好きなゲーム専用にカスタマイズされたキーボード」も入手できる。
「イラストレーターがペンタブレットを用いてイラストを描く場合、必要となるのは『コピー』や『ペースト』、『やり直し』などの数個のショートカットキーに限られます。またPC でプレイする多くのゲームも、移動アクションに割り当てられることの多い『W』『A』『S』『D』をはじめとする特定のキーしか使用しないものがほとんどでした」(城氏)
それらの厄介が、解決されるわけですね!

東大生が作った必要最小限のキーを配列できるキーボード
ゲームの操作性も格段にアップ。


そして、デザイン性について。

「ボードは2x3の6つのソケットを持ち、それぞれにキーを差し込むことができるようになっています。キーの数を増やす場合、キーを30個置くと遅延が出てくるので25個程度を上限にしています。新たに開発しているバージョンは、60キーくらいでも遅延は感じません」(城氏)
キーデザインはクリアカバー付きのキートップによって自由に変更可能であり、ボード自体も高いカスタマイズ性を持ちます

これ、欲しい人はかなりいるでしょう! 当然、商品化の予定が気になります。
「クラウドファンディングでの資金調達は残念ながら目標額に届かなかったので、コンセプトや設計を見直し改めて製品化に向けて動く予定です。年内には新たな動きを公開できればと思っています!」(城氏)

特にゲーマーと専門職の方は、今後の動きを要チェックか!?
(寺西ジャジューカ)