先日、首相が国会中に「ポケモンGO」をやっていたことがニュースになったノルウェー。実は、日本文化がかなりポピュラーな国らしい。

ノルウェー情報を発信するフリーマガジン『Style NORWAY』には、ピカチュウの着ぐるみ姿で首都オスロを歩くコスプレ女子の写真が載っていた。本当にそんなに人気なのか? 実際にノルウェーで確かめてきた。


日本オタク向けのショップがあった


まず結論からいうと、今回ノルウェーでコスプレ女子に会うことはできなかった。首都オスロ滞在が20時間程度しかなく、しかも平日だったせいもある。

ただ、オスロにある日本オタクのための店で、話を聞くことはできた。店名は「NEO TOKYO(ネオトウキョウ)」。オスロ中心部のショッピングセンター2階にある。

ノルウェー中の日本オタクが集まる店「NEO TOKYO」 ポケモンGO人気でグッズ買い占めも

店内には日本のマンガやDVD、おもちゃ、ぬいぐるみ、ゲーム、さらには日本の食材など、見慣れたアイテムがずらり。なんだかアキバにでもいるような気分だ。
ノルウェー中の日本オタクが集まる店「NEO TOKYO」 ポケモンGO人気でグッズ買い占めも

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「何の店って聞かれると少し困るんですよ」
はにかみながら答えてくれたのは、この店のオーナーであるジャンさん。ノルウェー人の父と日本人の母をもつハーフで、日本語もペラペラである。
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店内をキョロキョロと見回すと、奥の方に着ぐるみ発見! やっぱり人気なの?
「そうですね。日本ではパジャマとして売られているものですが、こちらでは街なかをコスプレ姿で歩いたり、イベントに来ていったりする人が多いんですよ。
ピカチュウなどのキャラクターのほか、パンダやユニコーンも人気です」(ジャンさん)
オスロでは年に数回、ノルウェー中の日本アニメ好きが集まる「デスコン」なるイベントが開催されているが、同イベントにもコスプレが欠かせないのだとか。ちなみに同店は「デスコン」のスポンサーでもあり、日本アニメファンのすそ野を広げるのにもひと役買っている。
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ノルウェーでは日本のオタクカルチャーはクール


客層は18歳前後の若者が多く、男女比は女性の方が少し多いくらい。学生が多いため、夏休みにあたる7~8月はものすごく混むそうだ。着ぐるみだけでなく、日本のアニメグッズがここまでそろう店は、ノルウェーでは同店くらいしかないため、必然的にノルウェー中の日本オタクが集まってくるらしい。

「ノルウェーでは、日本のオタクカルチャーはクールという印象なんですね。なかには、“よくわらかないけど、なんとなくかっこいい”という人もいます」(ジャンさん)

ところで「ポケモンGO」の影響は?
「ポケモンはノルウェーでもテレビでやっていて、以前から店でも上位3位に入る人気キャラクターでしたが、『ポケモンGO』リリース後はますます人気が高まっています。
ちょっと前までポケモングッズは買い占められていて、ほとんど商品がなかったんですよ」(ジャンさん)
ノルウェー中の日本オタクが集まる店「NEO TOKYO」 ポケモンGO人気でグッズ買い占めも

ポケモン以外に最近人気なのは『進撃の巨人』関連グッズ。マンガでは、『NARUTO』や『DEATH NOTE』もよく読まれているそうだ。

店のオープンは意外に古く2006年。当時は日本のオタクカルチャーはほとんど知られていなかったが、「きっと需要はあるだろう」と可能性を感じてオープンを決意したというジャンさん。その読みは見事にあたったわけだ。


日本のお菓子やドリンクも人気


日本人気はオタクカルチャーにとどまらない。いま世界的に日本食がブームだが、NEO TOKYOでも日本のお菓子やドリンクはよく売れているそうだ。


現在、客のほとんどはノルウェー人だが、日本食材を目当てにくる日本人客もいるという。そういえば七味唐辛子も売っていたが、箱には“NANAMI”の文字。海外では一味(ICHIMI)と七味(SHICHIMI)の発音や文字列が似ていて区別しにくいため、あえてNANAMIにしているのだとか。
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日本でもよく見る手作りお菓子のキットには、手書きのポップがつけられ、「DIY BENTO」という説明が添えられていた。
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本格的な弁当屋やラーメン展もオープン


オスロでは、屋内市場「マートハーレン」に日本風の弁当を売る「Obento box(おべんとうボックス)」という店も数年前にできた。餃子弁当やトンカツ弁当、寿司などのほか、枝豆や納豆といった日本の冷凍食材もそろっている。

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さらに今年4月にはオスロ初の本格的な日本ラーメン店「Sapporo Ramen bar(サッポロラーメン・バー)」もオープン。シェフの稲毛勝さんは、もともとフランス料理の世界で腕を振るい、ノルウェー王宮の料理人を務めたこともあるスゴイ人。実は前述のObento boxも稲毛さんの店だ。
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お客さんの半数以上は日本を訪れたことがある人で、「やっと本場のラーメンが食べられる」と大喜び。私が訪れたときもファミリーやカップルなどさまざまな人たちが上手に箸を使いながらおいしそうにラーメンを食べていた。味は、味噌・醤油・和牛・スパイシーの4種類。
1番人気はコチュジャンやチリオイルを使ったスパイシーラーメンだそう。

異国で日本の文化に出会うと、なんだか妙にうれしい気分になる。ノルウェーで確実に市民権を得つつある日本文化。思いがけない日本との出会いも、ノルウェー旅行の楽しみだ。
(古屋江美子)

取材協力:ノルウェー政府観光局