小さな頃の思い出を未来に残す物。と言えば、写真やビデオ、母子手帳など。

その中で一番生々しく、かつ不思議な物は、へその緒ではないだろうか。

へその緒とはご存じ、母親と赤ちゃんをつなげる栄養の管。
生まれてすぐに取れるわけではない。数週間後、自然にぽろりと取れる。
これをしっかり乾燥させ、桐の箱などに入れて大事にとっておく。もしくはお守り袋に入れておく家庭もあるそうだ。


身体から離れてしまったこのへその緒。何故わざわざとっておくのか、はっきりとした理由は分からないそう。
思い出のため、「持っておくと子供が病気にかからない」と言うおまじない、はたまた子供が病気になった時に煎じて飲めば病気が治る……なんて嘘か本当か分からないような話まで。

一生涯持っているかどうかはともかく、へその緒をその場で捨ててしまう人は今でも少ないという。
しかしこれ、日本では半ば常識だが世界ではほとんど見られない風習なのだとか。海外で出産し、へその緒を知らない間に捨てられてしまった人、残しておきたい、保管したいと言う希望を理解してもらえなかった。
などと言う声も多い。

日本とアジアの一部でしか行われていないこの風習だが、日本では大切なへその緒を保管するための容器も数多く販売されている。
そんなケースを販売する、たまご本舗さんでは、タンスの中に片づけてしまいがちなへその緒をいつでも飾っておけるようにと、“うみたてたまご”を開発した。これは桐の木で作られた、名前のとおりの丸いケース。乾燥させておけば、長期間の保存が可能。さらに、飾っても可愛らしいように開発され「子供との関係を見直すきっかけになれば」と願う。


このようにへその緒とは、自分が産まれたのだと言う証拠であり、かつて自分と離ればなれになってしまった体の一部。しかし一見グロテスク。
そんなわけで、慣習的にへその緒をとって置くものの、そのうちぽいっと捨ててしまう人も多い。
しかし家庭によってはへその緒ケースに一言を添えて保管、成人・結婚する際に渡すサプライズを用意していることもある。
それに捨てる捨てないの前に、へその緒がどこへ行ってしまったかわからないと言う人も多いだろう。

今はちょうど季節の変わり目、大掃除や模様替えの際に一度探してみては。

(のなかなおみ)