新しいアルバムの発売もして現在も精力的に活動するMr.Children。しかし、1990年代後半の彼らは活動休止を経験するなど、多くの悩みを抱えていた。
特にヴォーカルの桜井さんは今でこそ笑顔が目立つが、この時期のインタビューを見るとまったく笑わず、目がどこか虚ろで不精ひげを生やしているものもある。
90年代後半のインタビューの内容を今改めて振り返ってみると、現在も最前線で活躍しているのが信じられないほどだ。今回はそんな多くの悩みを抱えていた時期のMr.Childrenを雑誌での桜井さんのインタビューより振り返っていこう。

【大ブレークでの葛藤】


Mr.Childrenは94年~96年に「ミスチル現象」と呼ばれるほどのブームを起こし、出す曲はみなヒットした。そのため、アイドル的な人気があった(1995年「anan」の抱かれたい男ランキングで桜井さんが5位にランクインしたほど)が、桜井さんは自身へのアイドル視を悩んでいた。事実、「スター稼業は嫌」「ファンからキャーキャー言われて自分が天狗になるのが嫌」などと語っており、アイドル視される"Mr.Childrenの桜井和寿"とひとりの人間としての"桜井和寿"のギャップに苦しんでいたことが分かる。
また、バンドとしてあっという間にセールス面では大成功してしまい、今後はなにがあるのかと音楽面での悩みもあったと語っている。


【プライベートでの問題】


また、この時期は桜井さん自身のスキャンダルにより、プライベートな部分でも余裕がなかった。後に過去の活動を振り返ったインタビュー(ROCKIN'ON JAPAN 2009年1月号)では、「不倫してんじゃんと突っ込まれる前にこのぐちゃぐちゃを吐き出してやろう」と思い、自身の悩みや葛藤を音楽にしていたと語っている。
90年代後半は私生活と音楽面の二重の問題に直面していたことが分かる。

【問題作「深海」の発売】


そんな状況で発売されたアルバム「深海」はミスチルの中でもかなり異質な作品だ。暗くてダークな曲調、「明日なんて信じるな」などという救いようのないメッセージ、ハードで反社会的なスタンスなどが特徴的で今のミスチルとは真逆である。
このアルバムは当時の桜井さんの"混乱"をそのまま描いており、「深海」作成中は「死にたい」と語るほど追い込まれていたことが知られている。

また、当時のインタビューではかなりシニカルな発言をしており、発売前のインタビューでは(ROCKIN'ON JAPAN 1996年08月号)「深海が売れなかったら大衆のせい」と語り、発売後に意外とセールスが良かったことを聞かれた際(ROCKIN'ON JAPAN 1997年06月号)も「音楽の力だけでは売上につながらないから」と突き放した発言をしている。


【バンド初の活動休止】


そして1997年、Mr.Childrenはバンドとしては初めての活動休止をする。実はこの活動休止は事前に決まっていたらしいが、活動休止直前には「解散説も出てるが、ミスチルを続けるかどうかは分からない」、「ミスチルの事を考える余裕はない。自分のことで頭がいっぱい」(ROCKIN'ON JAPAN 1997年06月号)と述べており、解散していてもおかしくないような状態だった。

【「DISCOVERY」、「Q」のリリース】


しかし、Mr.Childrenは1年の充電期間を経て音楽シーンに戻ってきた。1999年、2000年には立て続けにアルバム「DISCOVERY」、「Q」をリリース。これらのアルバムでは、後に桜井さんが「ファンに向けてというよりも自分たちの音楽を確立したいという危機感に近い気持ちだった」と語ったように、新たな音楽の方向性を求めて試行錯誤していた。(ダーツで曲のテンポを決めたりもしていた)
またこの時期は小林武史によってプロデュースされることへの抵抗を感じており、この2つのアルバムは小林武史の関与が少ないとともに、ミスチルとしてはロック色が強いことが特徴的だ。

【解散まで考えたライブツアー】


「DISCOVERY」、「Q」で新しい音楽性を開拓し、「深海」からの長い"混乱"から脱出できたかに思われた。しかし、さらに大きな問題が起きていた。
「Q」を引っさげて行なったツアーで解散の危機に直面したのだ。桜井さんはこのときの様子を振り返り、「メンバーが音楽やってるときより酒飲んでるときの方が楽しそうな状態で進歩がなかった。解散まで考えた」(ROCKIN'ON JAPAN 2001年09月号)と語っている。
現在は桜井さんと他のメンバーとの間にはお互いに深い信頼関係があり、何を考えているか、どんな音楽を求めているかを分かり合っている。しかし、この時期はお互いを信用しきれていないことがインタビューからもうかがえる。
しかし、同じインタビューでは「Mr.Childrenでしか勝負するところはない」「ポップを再検証したい」という力強い発言もしていた。


【復活したMr.Children】


そしてその後、Mr.Childrenは復活を果たした。桜井さんは「90年代後半は自分のことしか見えてなかった。自分たちのエゴは置いといてリスナーと向き合おう」という気持ちに2001年のベストアルバム発売をきっかけになったと語っている。(ROCKIN'ON JAPAN 2009年1月号)
そして「Q」以降、ポップを再検証したいという言葉どおりに「IT'S A WONDERFUL WORLD」、「シフクノオト」と続けてポップ色の強い作品を残し、セールス面でも大きな成功を再び収めるようになった。

そして今年、新アルバム「REFLECTION」をリリースする。初のセルフプロデュースとなる今作では、より高いレベルへと足を踏み入れた彼らの音楽を聴くことができるだろう。