冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』が休載されてから18週目が経過。今回は単行本18巻を振り返る。

「HUNTER×HUNTER」休載から18週目「武器を落として勝利する」パターン考察
グリードアイランドをクリア後はいよいよキメラアント編に突入。仙水さんが悪堕ちするレベルに等しい残虐シーンがこれからたくさん出てくる。

グリードアイランドクリアのため、互いのカードを掛けて戦闘に入ったゴンチームとボマーたち。それぞれが同時にバトルに入ったものの、前座・キルア対サブ、セミファイナル・ビスケ対バラ、メインイベント・ゴン対ゲンスルーという描かれ方をしていた。
この組み合わせで不気味な存在なのはサブ。ゲンスルーやバラとは違い、ここまで特に実力を発揮するシーンはなかった。、しかし、キルアにはオーラの量がかなり多いと分析されていた。
バトルが始まると、キルアがヨーヨーで大木をバキバキとへし折っていく。
重さ50kgの特注品らしい。元々の重量に遠心力が加われる危険な武器…。サブは石を投げてキルアの手元からヨーヨーを離し、懐に飛び込んであばらに蹴りを入れる。
「よっしゃ、アバラ粉砕コォス」
達成感に酔いしれるサブだったが、次の瞬間、
「あれ? ヨーヨー2個あるって言わなかったっけ」
サブの死角から後頭部に重さ50kgが直撃。2個あるとは言っていないキルアが勝ってしまった。
Aが武器を手放す→それを見たBの動きが単調になる(武器の回収や攻撃を急いでしまう)→動きを読まれてAにトドメを刺される→戦闘終了、という流れはバトルものマンガ、アニメでときどき見かけるシーン。
こうなると大体、すぐに決着がついてしまう。勝利を確信するとついつい一直線な動きになってしまうからか。敗者にとっては思いがけない逆転負けである。
今回は武器を落として勝利するシーンがあったマンガ・アニメをこれ以外に3つ紹介する。

○アムロ・レイVS●ギュネイ・ガス 映画『逆襲のシャア』より
「HUNTER×HUNTER」休載から18週目「武器を落として勝利する」パターン考察
アムロ対シャアのラストバトルが描かれた映画。これを見た後、スパロボをやると共闘する2人がより一層愛おしく思えてくる。

地球にアクシズを落とそうとするネオ・ジオンとそれを阻止しようとするロンド・ベルの対立で起きた戦闘。
νガンダムを駆るアムロに、ヤクト・ドーガを駆るギュネイが立ち向かってくる。
このとき、ギュネイとともにクェス(α・アジール搭乗)も出撃していた。「子供に付き合っていられるか」とアムロはまるで相手にしなかったのだが、クェスはしつこく付きまとってくる。
α・アジールを撃墜しようしたところに、ヤクト・ドーガのビームライフルに被弾。νガンダムのシールドが半壊(数少ない被弾シーンの一つ)してしまう。
「なにっ!?」
この直後、アムロが突然投げ捨てたバズーカに気をとられてしまったギュネイ。その隙を見逃さなかったアムロにビームライフルにで撃墜された。

ギュネイも動きをある程度先読みしたうえでアムロと対峙していた。しかし、アムロに想定外の動きをされたことで動揺し、命を落とす。
勝利を確信して敗れたサブと、ワケが分からないまあ死んだギュネイ。対照的な心境である。
初見でぼーっと見てると速すぎて気づかない駆け引きであり、アニメ・漫画にありがちな断末魔もない。いちいち説明を入れないところがガンダムらしい。


●エドワード・エルリックVS○ゾルフ・J・キンブリー 鋼の錬金術師19巻より
「HUNTER×HUNTER」休載から18週目「武器を落として勝利する」パターン考察
読者の中では人気の高い、紅蓮の錬金術師・キンブリー。一本筋の通った悪役である。終盤、思わぬ形でエドワードの助太刀をするのが名シーン。

主人公、エドワード・エルリックと紅蓮の錬金術師ゾルフ・J・キンブリーの堅坑でのバトル。キンブリーは等価交換の法則を無視して錬金術が使える賢者の石を持っていた。
素早い動きで賢者の石を弾き飛ばし、掌の錬成陣を切りつけて、勝利を確信したエド。
しかし、キンブリーはもう一つ賢者の石を体の中に隠し持っていた。
「殺さない覚悟・・・立派なポリシーです。ですが、その甘さがもう一つ賢者の石も持っているかもしれないと考えれなかったことが貴方の敗因です。」
その言葉と同時に竪坑を破壊。
エドは落ちてきた鉄骨が刺さって吐血し、白目をむいて失神。主人公にして敗北してしまった。
サブ戦のキルア同様、エドも不殺の覚悟で戦いに臨んでいた。おそらく戦闘終了後に聴きたいことがあったのかもしれない。その姿勢をつけこまれて負けた。まずはキルアがサブにしたようにきっちり相手の意識を奪って拘束すべきだったんじゃないか。

○平賀・キートン・太一VS●フランチェスコ・メーダ 単行本2巻「天使のような悪魔」より
「HUNTER×HUNTER」休載から18週目「武器を落として勝利する」パターン考察
考古学者で軍隊経験のある保険調査員、平賀・キートン・太一。娘の百合子は猪熊柔に瓜二つ。父親は猪熊滋悟郎と声が同じである。

フィレンツェで保険金受取人である日本人を捜すよう依頼されたオプのキートンと、保険金を奪おうとするテロリスト・メーダ。
日本人にサインを迫るメーダの前に、金属性のベッドの脚を持ったキートンがやってくる。メーダは背中から短剣を抜き出しバトルスタート。
防戦一方のキートン。メーダの3発目の打ち込みでベッドの脚を落としてしまう。次の瞬間、メーダが武器の回収を最優先に動いた。しかし、こめかみにキートンの横蹴りが命中し、そのまま戦闘不能になってしまった。
『接近戦の場合、自分の武器を十分、敵に印象づけた後……故意に武器を捨てることで、敵の攻撃パターンを操作することができる。北米イロコイインディアンのナイフ術の奥義だ。』
キートンさんが戦闘中に武器を捨てる事のメリットを以上のように説明している。キルアは大木をへし折って、十分にヨーヨーの脅威を印象付けた後、意図的に武器を捨てた。イロコイインディアンのナイフ術奥義に等しい戦術である。
武器を捨てるというのは投降に近い。殺しの場数を踏んでいるものは、これを好機と見込んで懐に飛び込んでくるし、人を殺めることに難色を示すものはこの時点で武器を下ろしてしまう。
プロハンターになってからのキルアは、殺そうと思えば殺せるけどできるだけ命は奪わないでおこうという思想を持っている。死闘の際には、そういうキャラクターが一番強い気がする。
(山川悠)

参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる