連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第14週「みんなの夢」第78回 1月5日(金)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:東山充裕 中泉慧
「わろてんか」78話。ええとこなしですやん…そして、恋愛禁止なのにラブが止まらない件
イラスト/まつもとりえこ

連続朝ドラレビュー 「わろてんか」78話はこんな話


安来節乙女組(畦田ひとみ、鈴木球予、大後寿々花、辻凪子)に艶っぽさが欲しいという藤吉(松坂桃李)に、てん(葵わかな)は、リリコ(広瀬アリス)に教えてもらおうと思いつく。

ええとこなしですやん


安来節乙女組の4人に艶っぽさどころか強烈な個性がなく、どうも名前と顔が一致しないのは、年をとるにつれ、ジャニーズの若手グループがわからなくなるようなものだろうか。

そのうち、「アタシは嵐までだったなあ」「Kis-My-Ft2までギリギリなんとか」のような感じで、「アタシは、GMTまではわかった」「あたしは、乙女寮まで」などという、時代の流れと自分との距離を測るための会話の例えのスタンダードに、朝ドラに出てくる【女の子集団】も加わるかもしれない。


とはいうものの、乙女組のパッとしなさはお話の流れ的に必然のようで、リリコは酷評。
てんは「ええとこなしですやん」と苦笑い。
そういうときも笑顔を忘れないてんだったが、最後には乙女組をどやしつける。いよいよ、たくましくなってきた。

ところで、「もうすぐ、初高座」という台詞があったが、この前の初高座はどうやらおとわの失踪で流れたらしい。初高座を延期するってけっこう重たい話ではないのか。
このへん、どうも、ええかげんですな。

朝ドラ名物二連発だが


リリコが、乙女組批判をしているところを、当人たちが【立ち聞き】し、もっとちゃんと教えてほしいと詰め寄る。確かに、リリコ、個人主義ぽくて、ひとを教えるのに向いてない感じだ。
日本の家屋は、西洋の家屋のようにドアで部屋と部屋がしっかり閉ざされていないため、情報が筒抜け。それを逆手に取って、朝ドラでは話を転がすときに【立ち聞き】を使うことがよくある。
とりわけ、江戸から明治にかけてが舞台のため、家の構造がかなり開放的だった「あさが来た」(15年)で「朝ドラ名物立ち聞き〜」とSNSが沸いたものだが、ちょっと最近、食傷気味。そんなに簡単に踊らされんわと思ってしまう(と思うのは一部のマニアであって、時計代わりに観ている層はなんにも感じてないだろう)。


78話は【立ち聞き】2連発。乙女組に次いで、おトキ(徳永えり)が立ち聞き。
風太(濱田岳)がキース(大野拓朗)相手に、おトキの悪口(斜に構えて言ってるだけなのだが)を言っているところをおトキに聞かれてしまう。
いつものように手が出るかと思ったら、おトキは走って去ってしまった。
おトキが風太に想いを寄せているのは、ちょっとずつ見えていたが、てんのことばかり考えているようだった風太もいつの間にやら、おトキの言動が気になって気になって仕方ない様子で、動揺しまくり。
乙女組に恋愛禁止令を出している風太自身が、自分が恋愛の渦に巻き込まれている面白さはある。


もどかしい恋の錯綜


乙女心といえばリリコも。
未だ藤吉のことが忘れられないらしい。ハスッパに見えて、純で、売れっ子なのに貧乏長屋に住み続け、好きでもないひとと演技でも抱き合うなんていやだと、栞(高橋一生)の要請を突っぱねる。
「ほな、あんた、うちのことを抱きしめられるんか 無理やろ」と挑発するリリコ。
「あんたも だいぶ愛情に飢えているんやなぁ こんな台本作らして」とまで言われても、いっこうに態度を崩さない栞。
藤吉を思うリリコ、てんを思う栞。
報われない想いを抱えるふたり・・・ってドラマちっくなはずなのだが、
なんだか空々しい。
現代の学園を舞台にした恋愛ものなら十分成立する(配信の恋愛ドラマなどはこんな感じだ)が、ここはもうすこし、時代背景、登場人物の年齢、環境などを考えてほしいところ。リリコも栞も、住む世界も時間もずいぶん変化しているわけで。もちろん、公的な顔と、心のうちに抱えたギャップがドラマになることもあるのだが。
俳優がリリコが乙女組に言った「からくり人形みたい」になってますぜ(俳優のせいではなく)。
ただ、「いややいややいやや」とブーって唇を鳴らす広瀬アリスにはガッツがあった。

(木俣冬)