本日、ついに最終回を迎えるTVアニメ「ゆるキャン△」
各務原なでしこ、志摩リン、大垣千明、犬山あおい、斉藤恵那は、クリスマスイブに5人で初めてのキャンプを実行。朝霧高原での楽しいクリスマスの時間が過ぎていく。

「ゆるキャン△」京極監督も実体験「キャンプでは他愛ない会話が大切で素敵なものに」
原作は、あfろ(読みは「あふろ」)が『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)で連載中。コミックスは第6巻まで発売されている

なでしこら登場人物たちが魅力的なのはもちろん、キャンプ未経験者でもアウトドアグッズをネット検索したくなるほど、キャンプの楽しさも伝わってくる本作。
京極義昭監督インタビューの後編では、キャンプ描写のこだわりや、話題になったナレーションについても話を聞いた。
(前編はこちら
「ゆるキャン△」京極監督も実体験「キャンプでは他愛ない会話が大切で素敵なものに」
京極義昭監督。初監督作品となる本作の制作に向けて、劇中と同じ秋冬シーズンに、モデルとなったキャンプ場でのロケハンを敢行。なでしこと同じくキャンプの魅力を知った

小ネタも含めて「ゆるキャン△」の面白さだと思っている


──「ゆるキャン△」では、アウトドアに関する描写も多いですが、京極監督は、元々、アウトドアに詳しかったのですか?

京極 僕もすごくインドアなので、あまり経験はなかったです。でも、この作品の監督をやるからには、とりあえずキャンプをしてみないと始まらないですから。作中に出てくるいろいろなキャンプ地でロケハンとして実際にキャンプをしました。ソロキャンプもやりましたね。キャンプをして思ったのは、時間の流れ方も普段と違う風に感じるということ。
普段、生活をしていると、スマホだったり映像だったりといった情報に囲まれているんですけれど、キャンプ場に行くと……特に一人で行くと何もないんですよね。その代わり、冬の空気の冷たさや焚き火の煙の匂い、鳥の声や風でそよぐ木の音といった普段気づかないことや、感じられないものを感じられるんです。いつも視覚や聴覚の情報ばかり使っている気はしていたんですけど、実際、キャンプ場へ行くと肌感覚というか、普段使わないところが元気になってくる感覚があって。それがすごく新鮮でした。ちょっと足を伸ばすだけで、普段経験することができない感覚をこんなにも感じられることに一番驚いたんです。アニメは視覚と聴覚の情報しかないんですけれど、その感覚がちょっとでも体験できるような映像にできるといいなと思って作っています。

「ゆるキャン△」京極監督も実体験「キャンプでは他愛ない会話が大切で素敵なものに」
中1の冬、祖父からキャンプ用具を譲ってもらいキャンプを始めたリン。一人で静かに過ごすのが好きで、シーズンオフの秋冬にソロキャンプをしている

──キャンプの魅力は、第1話を観ただけでもすごく伝わってきました。第1話はご自身でコンテと演出も担当していますが、特にこだわったポイントを教えて下さい。

京極 第1話の前半のほとんどは、リンがソロキャンプをしている描写。しかも、(モノローグが多くて)ほとんど喋らないので、すごく悩みました。最終的に、特に喋らなくてもキャンプしているだけで楽しいということを観ている方にも感じて欲しくって。あえて、原作よりもキャンプ描写を少し膨らませて入れています。
そこは、ある種のチャレンジではあったんですけれど、うまくいったかなと思っています。

──松ぼっくりが喋ったり、原作の細かなところも拾っていますよね。

京極 僕の中では、できるだけ、原作をそのままアニメにしたいという気持ちがあるんです。小ネタも含めて「ゆるキャン△」の面白さだと思っているので、そこもできるだけ拾いたいと思っていました。とはいえ、やはりアニメとして表現する時には、完全に原作のままではできない場合もありますし、取捨選択もしなくてはいけないんですけどね。それでも、「面白いな」と思ったところは、なるべくアニメでも使わせていだだくように工夫しています。


ナレーションを大塚明夫さんにお願いして本当に良かった


──アニメになって、より魅力的になったポイントの一つがナレーションかなと思います。大塚明夫さんを起用された狙いを教えて下さい。

京極 メインが女の子5人なので、ナレーションも女性だと少しかぶってしまう気がして、思い切って渋い男性の声にしたら、差別化できるし締まって良いんじゃないかなと思いました。それで、渋い声と言えば、大塚明夫さんかなって。女の子ばかりのアニメで、ナレーションに大塚さんというキャスティングは、異色だとは思いました。僕も(打ち合わせで)大塚さんの名前が上がった時には、最初「え!?」と思ったんです。でも、逆に、自分がそう思ったということは、お客さんにとっても意外性があるだろうし、作品のフックにもなるかなと。
これはチャレンジしたくなるキャスティングだなと思ったので、思い切って明夫さんにお願いしました。結果、第1話から最高でしたね。「松ぼっくり」の一言を聴いただけで、アフレコ現場は大爆笑(笑)。明夫さんにお願いして良かったと思いました。しかも、話が進むにつれて、ちょっとずつ、さらに遊びを入れてくださって。時には嬉しそうに喋ったり、時にはすごく渋い声だったり。
非常に幅のある演技をしてくださっています。ただのナレーションじゃない感じが面白くて、繰り返しになりますが、明夫さんにお願いして本当に良かったです。

──私の特に好きなシーンについてうかがいたいのですが。第5話のラスト、別々の場所でキャンプをしているなでしことリンがSNSで夜景の写真を送りあい、二人の景色が一つに繋がる。原作(第2巻)では小さなコマで描かれているシーンですが、アニメでは序盤から中盤にかけてのクライマックスになっていると思います。
「ゆるキャン△」京極監督も実体験「キャンプでは他愛ない会話が大切で素敵なものに」
第5話のクライマックスシーン。野クルメンバーでキャンプに来たなでしこと、同じタイミングでソロキャンプをするリンは、深夜に写真を送り合う。二人の「きれいだね」という台詞は、原作にはないアニメオリジナル

京極 確かに原作では小さくしか描かれてないんですけど、実は作品の重要なテーマを表しているシーンだろうと僕は思っています。常に近くにいるわけではないけれど、遠くにいても(二人は)ちゃんと繋がっている。そういうものを表した非常に素晴らしいシーンなので、脚本の段階からこのシーンには力を入れなくてはと意識していました。それもあって、第5話は自分でコンテを描いたんです。勝負カットなので、力のあるコンテにしたいという気持ちで臨んだのですが、いろいろと凝ったカット割りやカメラワークを考えていく中、なんだか違う気がしてきて。作品的に、そういう過剰な演出は必要じゃないと思ったんです。これは、「ゆるキャン△」という作品全体にも当てはまることなんですけれど、シンプルな画面で良いんじゃないかなと。そうやって悩みに悩んだ結果、すごくシンプルな映像になりました。

──シンプルですが力のあるシーンだと思います。

京極 ありがとうございます。立山(秋航)さんの音楽も非常に良いものを上げていただいて。オリジナルで付けたセリフも、アフレコ現場で聴いた時、ゾクゾクってくるような良いお芝居だったんです。この素材で魅力的になると思ったので、それを一番良い形でまっすぐお届けするという意識で作りました。背景も非常に良くて、映像と音楽がマッチしていたと思います。僕も作っていて手応えがあったので、ぜひ観返してもらえたら嬉しいシーンですね。

──第11話では、ついにメインキャラ5人が初めて一緒にキャンプに来ました。最終回も引き続き5人のクリスマスキャンプの様子が描かれるかと思います。5人でのキャンプを描く際、特にこだわったことなどはありますか?
「ゆるキャン△」京極監督も実体験「キャンプでは他愛ない会話が大切で素敵なものに」
第1話のアバンでは、クライマックスであるクリスマスキャンプの様子が先行して描かれた。「第1話は原作通りだと、なでしことリンしか登場しないので、千明、あおい、斉藤さんも登場させたかったんです」(京極監督)

京極 クリスマスキャンプは、リンにとって初めてのグループキャンプ。これまでソロキャンプばかりしてきたリンがグループキャンプも楽しいなと思うところは見どころの一つなのかなと思います。僕もロケハンでは、グループキャンプもしたんですけど、やっぱり仲間と一緒に食べるご飯ってすごく美味しいんですよね。それに、本当にたわいのない会話でも、キャンプをして、焚き火を囲みながらする会話って、すごく豊かな時間になる感覚がありました。この作品も、キャンプをしながら、特に重要な内容の会話をするわけではないんですけどね(笑)。でも他愛ない会話がとても大切で素敵なものに思えてくる。そういう感覚を、グループキャンプの魅力として描けていたら良いなと思っています。そこもやっぱり「ゆるキャン△」の魅力の一つだと思うので。
(丸本大輔)

『ゆるキャン△』キャスト、スタッフ、主題歌



【メインスタッフ】
原作:あfろ(まんがタイムきららフォワード/芳文社刊)
監督:京極義昭
シリーズ構成:田中仁
キャラクターデザイン:佐々木睦美
色彩設計:水野多恵子
美術監督:海野よしみ
撮影監督:田中博章
音響監督:高寺たけし
音楽:立山秋航
アニメーション制作:C-Station

【メインキャスト】
各務原 なでしこ:花守ゆみり
志摩 リン:東山奈央
大垣 千明:原紗友里
犬山 あおい:豊崎愛生
斉藤 恵那:高橋李依
各務原 さくら:井上麻里奈
ナレーション:大塚明夫

『ゆるキャン△』動画は下記サイトで配信中


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