第7週「謝りたい!」第39回5月17日(木)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土井祥平
40話はこんな話
秋風(豊川悦司)が渾身で描いたネームがなくなり、部屋の掃除をした鈴愛(永野芽郁)が捨てたのではと疑われる。
秋風は、原稿は「わが子同然」と言った漫画家の話を持ち出し、ネームが見つからなかったら切腹してもらうと鈴愛に詰め寄る。
律と正人の運命の出会い
「っしゃいまっせー」という独特の口調(字幕だとふつうに「いらっしゃいませ〜」になっているが俳優が工夫しているらしい)でアフロヘアのマスター・シロウ(東根作寿英)がいる【喫茶おもかげ】で、律(佐藤健)が女の子とお茶していたら、秋風を探しに鈴愛が現れた。
知らん顔しようとしたが見つかってしまい、挙句、女の子は席を立ってしまう。
律、すぐにナンパ? やるなあ、と思ったら、女の子から話しかけて来たのだった。これが正人(中村倫也)が言っていた「磁石に吸い付くように」ってことだろうか。
鈴愛も鈴愛で、律が見知らぬ女性とお茶してたら、武士の情けとばかり、知らないふりしてあげてもいいかもと思うが、あの性格だから気にしないというか、気づかないんだろう。
そして、鈴愛と律の家は10分もかからない近所であることが判明した。
それを決めた和子(原田知世)は、キミカ(余貴美子)と晴(松雪泰子)とともにボクササイズをやり、律不在の寂しさを紛らわすのだった。
ここで、ボクササイズをもってきたり、二の腕のふるふるを語り合う女たちだったり、女の最大公約数的なものに敏い北川先生。
それにしても、キミカ先生(余貴美子)はカウンセリングもするなんて、町のお医者さんってなんでもやらないとならないのだなあ。
スクリーントーンの貼り方など画面の処理の仕方のデザイン性がすごくかっこいい。スクリーントーンを影や模様に使ってリアリティーを出すためではなく、表現のひとつ先にいった、ポップアートの域なのです。それが当時のくらもちふさこの存在意義のひとつ。
秋風のネーム
インスタントーラーメン味噌味を作っているときに、秋風先生になにかが降臨。
新しい漫画のアイデア「さよならは私から言う」を、ネームにしはじめる。
ところが、そのネームが消えてしまった。
部屋の掃除をした鈴愛は落書きのようなものが散らばっていたので、ゴミと思って捨ててしまった。
「私の遺作だ」と、24話の菱川(井川遥)の「生きてるうちに」に次いでまたしても意味深いなことを言う秋風。
そんな菱川が、清掃車の燃えるゴミをどう処理するか事細かに説明するところは意外性があり、かつ豆知識だったので面白かった。
ナカノガタ
プロ漫画家だが忙しいときに手伝いに着ている中野(河井克夫)と、プロアシの野方(猫田巨)は忙しいときふたりまとめて呼ぶときは「ナカノガタ」と呼ばれる。
中野役の河井克夫は「あまちゃん」にも出ていた。アキをネットで見て北三陸にやってきたアイドルオタクのひとり。大人計画の舞台にも出演する俳優でもあるが、本物の漫画家でもあるので、オフィスティンカーベルのなかでは一番、リアリティーがあるはず。でも、かつてしりあがり寿のアシスタントをしていて、その作風は、くらもちふさこの少女漫画とはまったく違う。
野方役の猫田直は、「とと姉ちゃん」にも出ていた寺十吾主宰する劇団tsumauki no ishiの創立メンバー。
ナカノガタには小劇場感がある。おりしも90年頃は小劇場ブーム。tsumauki no ishi は92年に旗揚げされた。
鈴愛のカケアミ
鈴愛はカケアミを描いたコマ(「チープスリル」3巻に出てくる)はグルグル円になっていた。
永久機関、ゾートロープ、ぐるぐる定規、拷問器械、はじめて描いたカケアミ・・・とグルグル回るものに縁がある、鈴愛。
彼女のハンディキャップである、耳にも蝸牛という部位もあるし、それがある内耳(平衡感覚を司り、そこに疾患があると回転性目眩が起こる)は“迷路”とも呼ばれているそうだ。
なんとなく、ぐるぐるが繋がった。
律と正人の偶然の再会、律と鈴愛のおもかげでの出会いも、ある意味、ぐるぐると縁がつながっていることである。
ぐるぐるつながりだったら、ナワアミのほうがベターだったかもしれないが、くらもち漫画でちょうどカケアミで円を描いているカットを見つけてきたところはすごい。
ちなみに「チープスリル」の一巻冒頭、登場人物がボーダーを着ている。
(木俣冬)