第8週「新しい冒険!?」 第45回 11月21日(水)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」45話。鈴よりタカちゃん?高齢者を大切に
イラストと文/木俣冬

45話のあらすじ


家出した鈴(松坂慶子)は清香軒に居候していた。自分がいなくなってさぞみんな困っているだろうと思ったら、店に来たたちばな塩業の若者たちがタカちゃん(岸井ゆきの)ばかり褒める会話を聞いて、さらに拗ねてしまう。
大阪市内まで鈴を探しに来た福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)は戦争で焼け出された人たちの苦しみに触れる。


今井鈴 56歳


鈴さん、56歳かー(張り紙より)。
サザエさんのフネはアニメの設定では52歳。
現代の五十代と言ったら「SUITS/スーツ」の鈴木保奈美、「黄昏流星群」の黒木瞳……と思うと隔世の感がある。とはいえ、松坂慶子は六十代で五十代をキュートに演じているといえるだろう。

だが、若者たちは厳しい。岡部(中尾明慶)たちはタカちゃんの「内面のかわいさ」に気づいたが、鈴の「内面のかわいさ」にはまだ気づけない。おばさんと若い女性とを徹底的に差別する彼らの会話は現実的といえば現実的だが、いまの世の中では批判も出そうな視点ともいえる。
それをあまり気にならない程度にさらっと笑い飛ばして描く「まんぷく」。

この世の中には“差”は歴然とあるものだ、仕方ない、でも……ということを描く45話。
福子と萬平の生活は順風満帆。その一方で世の中には苦しんでいる人がたくさんいる。
なかなか見つからない鈴を探して、真一(大谷亮平)が勤める証券会社までやって来た福子と萬平。
掲示板に貼り紙をしたらいいのではと助言され、町の掲示板のあるところへ行くと、そこには帰らぬ人を待つ人の切実な声がたくさん貼り出されていた。


道々、端にぐったり座り込んだ人たちを見る福子と萬平。
萬平は真剣な眼差しで黙り込む。
「べっぴんさん」でも闇市の子どもたちを撮らせたらNo.1だった演出家・安達もじりが、ここぞとばかり、
時間をかけて衰弱した人たちの表情を見せていく。いつも子どもの撮り方がうまいなあと思う。劇伴は哀感あふれるトランペットの旋律。
ここのところ、ほのぼのサザエさん的な雰囲気だった「まんぷく」だが、安藤サクラと長谷川博己を起用した意味を感じられる奥行きのある場面だった。


家に帰っても「戦争はまだ終わっていないんだ」と昼間見た光景が忘れられない萬平。
「なんとか助けてあげられないものか」という思いが萬平の次なる発明につながるのだろう。
いい話である。

タカちゃんと神部さん


だんだんとみんなに馴染んでいるタカちゃん。最初は、十代の若者たちのアイドルだったが、二十代の若者たちも彼女の性格のかわいさに好意的になってきていた。余談だが、十代、二十代と分かれている若者たち。カミセン、トニセン的な感じがある。


春休みで泉大津にずっと手伝いに来ているタカちゃんが、ある日、神部(瀬戸康史)と一緒に洗濯物を干していると、男たちのパンツを平気で洗って干していることに神部はにわかに羞恥心を覚え、彼女からパンツを奪う。
最初に出会った時は子どもと思っていた彼女を神部は急に意識しはじめて……。
神部とタカちゃんのなんともほのぼのかわいらしい、何かがはじまりそうなエピソードだ。

楽しさと考えさせるところとが混ざったよくできた回だった。

福子とタカちゃんの「かわいそう」


戦争で傷ついた人について深く考え込む萬平に対して、福子は「かわいそうに」と路上の人たちに心を痛める。
家に帰って、「戦争はまだ終わっていないんだ」「なんとか助けてあげられないものか」と萬平が言うとき「ん? 萬平さんがですか?」と訊ねる福子。ここでは「ほんとうにそうね」「どうしたらいいのかしらね」などと一緒に話し合うような、対等な関係に福子を描けないものだろうか。
萬平の年齢のほうが福子よりもけっこう上っていうのもあるのだろうけれど。

たとえが飛躍しているかもしれないが、天皇皇后両陛下が被災地を視察にいらして、状況に胸を痛め、お言葉を発したりするとき、もちろんまずは陛下であるが、皇后様も自分の意見もきちんともってお言葉を発する機会がある。
このドラマで、福子を萬平と対等に確たる問題意識をもった自立したキャラクターとして描くには、舞台となっている時代がまだ早いということなのだろうか。

そして、タカちゃんも「かわいそうな泥棒さん(神部のこと)」と“かわいそう”を使っていた。
女性の台詞に「かわいそう」という言葉を無自覚に使っている印象が少し気になる。
なにげなく書いている台詞に作家の女性の登場人物観が浮かび上がってくるところがじつに興味深い。
要するに類型的なのだが、この類型をうまく使って、多数の支持を獲得し、まだまだ視聴率20%台をキープし続けているところが、脚本家・福田靖の存在意義といえるだろう。
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ


「べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
キアリス開店! わくわくの展開。
45話

「あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
相撲でおやすみ