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日大アメフット部問題は、腐敗した日本社会の縮図

2018年5月25日 19時10分

ライター情報:勝部元気


日本大学アメフット部の違反タックル問題が、連日様々なメディアで報じられていると思います。学生スポーツの一違反行為であればここまで大きな話題にはならなかったと思うのですが、アメフット部全体や、さらには日大という組織そのものの問題であることが浮き彫りになり、さらに注目を集める結果となっているようです。

それにしても、これほど指摘しなければならない問題がたくさんあるニュースも珍しいと思います。

◆パワハラが生んだ不自然極まりない違反タックル
◆内田元監督や大学側が宮川選手を突き放したような対応と言い逃れ
◆誠意を尽くした学生の記者会見に比べて稚拙さが目立った日大側の会見
◆日大の記者会見の司会者を務めた広報が鼻で笑われるレベルの酷い対応
◆日大のイメージを下げるような行動は慎むよう学生に指示する通達を出す大学側
◆学生の就活への影響を懸念することがメインになった学長の記者会見
◆日本体育大学や日大ラグビー部に苦情を入れる人たち
◆記者会見でアナウンスを無視して選手のアップを映し続けるマスコミ

等々、枚挙に暇がありません。確かに有名大学が不祥事で評判を落とすことはこれまで何度もありましたが、日大アメフット問題がこれまでの不祥事と次元が異なるのは、これだけ問題視されても学校側が非を認めない監督・コーチを庇い続け、事後対応も類を見ないほどの保身に走るところでしょう。まるで「セクハラ罪はない」と言ったどこかの財務大臣から学んだかのような対応です。

結局それが火に油を注ぐことに繋がるわけですが、残念ながら危機管理学部もあるはずの日大の中では、それを戒めることの出来る勢力が弱いのか、学長が出てきてもいまだにまともな対応は皆無です。来年2019年に創立130年を迎え、先人たちが築き上げてきた伝統ある日本大学のイメージは、悪化が避けられないと思います。

内田前監督を生んだのは日本のスポーツ文化では?


ここまで酷いと多くの人が日大に批判の矛先を向けるのも仕方ないと思いますが、この問題は必ずしも日大アメフット部や日本大学だけの問題ではないと思います。日本における“体育”やスポーツの文化そのものにも原因があって、今回の件はその結果として生まれた事件のように思うのです。

たとえば、厳しい指導に耐えながらも懸命の努力を続けて勝利を勝ち取ったことを賛美する根性論や、自分を押し殺して集団の勝利のために尽くす滅私奉公の賛美、1歳違うだけの先輩にも服従する強力なピラミッド構造を推進する「体育会系」の思想等がもてはやされる傾向にあります。日本の体育はしばしば旧日本軍との関連性を指摘されますが、確かにこれらの精神性に異様に重きを置いている点は共通していると言わざるを得ません。

このような考えを社会がすんなりと受け入れてしまいがちですから、今回の内田前監督や、女子レスリングの伊調馨選手をパワハラした日本レスリング協会の栄和人元強化本部長のような勘違いした指導者が生まれ、野放しにされ、あとからあとから出て来るのだと思うのです。

ちなみに、私はそのような運動部に属していたことはありませんが、高校生の頃に通っていた学校に元オリンピック選手でアーチェリーの銅メダリスト(その後銀メダルも獲得)の教師がいました。学校の階段を下りていたら、真ん中を歩いてきた彼に、「生徒がどくのが普通だろ!俺を誰だと思っているのか!」と言われて、暴力を振るわれたことがあります。おそらく平気で子供の人権や尊厳を傷付ける指導者がそこらじゅうにいるのでしょう。

感動ポルノとスポーツを合体させたマスコミ


そして、それらの責任はマスコミにもあります。根性論や滅私奉公や体育会系文化を賛美して、ある種ドラマ化する「感動ポルノとスポーツを融合させる演出」ばかりしています。オリンピック報道の際にも記事にしましたが、「お涙頂戴」等を重視して、スポーツそのものの面白さを伝えようとしていないのです。

実際、記者会見に臨んだ宮川選手に対しても、司会者からの制止を無視して顔のアップを映し続けただけではなく、タラレバ質問を繰り返す等、感動ポルノ的な演出をしようと試みる記者の質問が相次いでいました。それらのマスコミの愚かな質問に対して、インターネット上では大きな批判を呼んでいましたが、当然マスコミ自身は報道しません。自浄されず、また同じような問題でも、感動ポルノ目指して酷い質問を繰り返すのでしょう。

そして、マスコミに触発された巷の小さな指導者たちが、根性論や滅私奉公や体育会系文化賛美を平然と模倣してしまいます。さらに、「子供をしっかりしつけるため」と思って、あえてそういう環境を子に勧める親もいて、本当に人権侵害の再生産がマスコミを中心に起こっているように思うのです。

ライター情報: 勝部元気

株式会社リプロエージェント代表取締役社長。社会派コラムニスト。1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。専門はジェンダー論や現代社会論等。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。著書『恋愛氷河期』(扶桑社)。所有する資格数は66個。