テレビ朝日

 大手広告代理店の電通が2019年の日本における広告費の推定を発表、インターネット広告費がテレビメディア広告費を初めて追い越したとして話題となっている。

 テレビメディア広告費は前年度比97.3%で1兆8,612億円、インターネット広告費は2兆1048億円と前年度比で19.7%増と大きく伸長、広告主がインターネット広告に比重を移していった結果といえるだろう。

そして、今後もその比重は傾き続けると推測される。

 テレビ業界にとってはじわじわと真綿で首を絞められるような状況ではあるのだが、民放5局の中で最も危ういといわれているのが、意外なことにテレビ朝日だ。

「もうすぐまとまる1年の利益が、どうやら他局に比べて格段に悪いらしい。各社はだいたい昨年比で8~9割くらいのところ、テレ朝は6~7割くらいに落ち込むともいわれています」(キー局社員)

 実際に2月に発表された、各局の「2020年3月期第3四半期決算」の資料をひもとくと、その差は如実だ。「親会社株主に帰属する四半期純利益」で比較してみると、民放5局で視聴率トップである日本テレビHDは前年度比で-16.4%、フジ・メディアHDが-19.1%でTBSテレビは-18.5%、テレビ東京は-12.1%となっている。

 それに対してテレビ朝日HDは-66.6%。

テレ朝は日本テレビに続く民放2位の視聴率を誇るというデータもあり営業利益も高く出るはず……。しかし、そうもいかない理由があるそうだ。

「視聴率は高いが、個人でみると高年齢層が多いことが問題だ。広告は若い層につくから、スポンサーがテレ朝を敬遠しがちに。さらにほかの民放各社は不動産などの放送外収入もあるが、テレ朝は不動産などが少ない。コロナの影響で広告業界がしぼめば、さらなる減収もありえる」(前出のキー局社員)

 テレ朝のプライムタイム(19~23時)の看板番組といえばドラマなら『相棒』『科捜研の女』『ドクターX~外科医・大門未知子~』、報道なら『報道ステーション』など。

視聴者の年齢が高めなのは理解できるだろう。また、テレ朝にとってのもうひとつのドル箱『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』を金曜の夕方から土曜に移したが、その結果、視聴率が低下する事態も起きている。

 このような状況を見越してかテレ朝では、大規模な人件費の削減が行われた。

「一部で報じられていましたが、『報ステ』をはじめとした情報番組などで、契約スタッフを中心に、かなり大規模な人員削減が行われました。中には、放送作家全員をカットした番組もあるようです」(制作会社スタッフ)

 また、番組継続中の無理な人員削減で、内部情報が漏れるなどの事態も起こり、現場は混乱とともに疑心暗鬼に陥っているようだ。

 コロナショックで世界中の経済が混乱しているが、その余波はテレビ業界にまで及ぶはずだ。

テレ朝は、この局面を乗り越えられるのだろうか。