「あいつ、面倒くせえな」
はいこれ、ファミリードラマの父親が息子について言ったセリフです。

ドラマ「木更津キャッツアイ」「タイガー&ドラゴン」、映画「少年メリケンサック」などの人気作を手がける脚本家で映画監督で俳優であり、パンクコントバンド、グループ魂のギター、暴動としても活躍中のクドカンこと宮藤官九郎。
「第29回向田邦子賞」受賞以来初の連続ドラマとなる「11人もいる!」がテレビ朝日系列でスタートした。

舞台となる真田家は、10人家族。仕事のないカメラマンの父、実(田辺誠一)と自宅でカフェを経営する母、恵(光浦靖子)。アルバイトの掛け持ちをして一家を支える長男、一男(神木隆之介)を筆頭に8人の子どもたちがいる。末っ子の才伍(さいごと読みます!)を演じるのは加藤清史郎くん。子ども店長のころと比べてずいぶんと日焼けした肌が気になるけど、相変わらずちっこくてかわいい。
そして、実の弟で家族の援助をしてくれているヒロユキおじさんには、バンド、SAKEROCKやソロとしても活躍中のミュージシャンであり俳優の星野源! 
決して裕福ではないけど、いつも明るく賑やかな真田家に、実の先妻で元ストリッパー現幽霊のメグミ(広末涼子)が現れる。才伍以外の子どもの母親であるメグミの姿は、なぜか才伍にしか見えないらしく……

ヒロユキに言わせると「生活能力がないのに生殖能力が高すぎる」実は、仕事も収入もなく、かといって慌てる風でもないお気楽なダメ親父。新聞配達やガソリンスタンド、家族に内緒で始めた夜のバイトと寝る間も惜しんで働く一男は、「なんで俺だけが……」と日に日に不満をつのらせる。健気でがんばり屋、大家族の長男にありがちな一男の姿を見た実は、「なんでもひとりで背負いこんでイライラして、それが長男だと思いこんでる。長男性背負い込み症だな」。
……一男じゃなくてもいやだよ、こんな父親。

でも、このお父さんがかわいいんだわ。「七人の恋人」「あべ一座」など、クドカン作品でもおなじみの、田辺誠一のハンサムバカっぷりが炸裂。「タイムサービス中 全品99円!」の貼り紙がされている回転寿司でのこと。100円玉1枚をにぎりしめた実は、「これだ!」というひとネタを求めてレールを睨みつける。そこに、大トロが登場! 嬉しくてたまらないという様子で、人差し指と中指で皿を呼びよせたり、舌で頬を突く実。モノマネ芸人のやるキムタクのような表情や動作がアホっぽさが絶妙なのだ。


母はというと、なぜ実はこの人と再婚をしたの? とメグミでなくても疑問に思うくらい地味な印象の女性。でも、「カメラなんか売っぱらって早くこの家に金を入れろよ!」と実を責める一男に「お父さんのカメラとお母さんの料理がある限り、うちは貧乏じゃありません!」と一喝する姿は、実じゃなくても惚れるよ。一男を「さん」付けで呼ぶなど、ぎこちないところはあるけれど、押し付けがましくない母性が心地いい。

それから、星野源ですよ! ポイントは2つ。口角がクイッと上がる子犬のような笑顔と劇中で歌う「家族格言」だ。
「助け合ったり励まし合ったりしなくていいのが家族なんだ」
一男が発した言葉が、源ちゃんの穏やかな歌声で反復される。
うんうん、家族なんて気負ってなるもんじゃないもんな。
家族愛や絆なんて言葉は似合わない、ちぐはぐでバラバラに見える真田家(と幽霊)を観て笑っていたはずが、いつの間にやら家族っていいよねに変わっている。なんだこのマジック。
第2話は、本日午後11時15分(一部地域で時間が異なる)から。お見逃しなく!(畑菜穂子)