仏国鉄SNCFは4月2日、LCC(ローコストキャリア)に対抗するべく世界で初めてLCC方式での高速鉄道(TGV)格安運賃サービス「OUIGO(ウイゴー)」を始める。LCCとはサービスを簡素にしてコストを下げる代わり、通常より低く押さえた運賃を提供する格安航空会社のこと。
昨年、日本ではピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンが格安運賃で国内線に就航し話題となったが、欧州では10年以上前から同様のサービスが行われており、今回鉄道版がお目見えすることになった。

SNCFによれば、運行されるのはパリ、リヨン、バランス、アビニョン、マルセイユ、ニーム、モンペリエを結ぶ線。運賃は大人片道各10ユーロ(約1200円)、子供片道各5ユーロ(約610円)から。SNCFはLCCとの価格競争のため以前からTGVで低運賃を提供してきたが、今までのものと比べてみても、例えばパリ・マルセイユ間でSNCFの3ヶ月前購入の割引乗車券プレムが25ユーロ(約3200円)から、同インターネット限定の割引便iDTGVが35ユーロ(4300円)から、LCCライアンエアーの34.23ユーロ(約4200円)から、と大幅に下回る。

安さのカギは鉄道へのLCC方式の完全導入だ。まずパリとリヨンでは利用料の高い市内駅ではなく、パリはマルヌ・ラ・バレ(ディズニーランド・パリの最寄り駅:市内中心部から列車で約35分)、リヨンはサンテグジュペリ空港(市内中心部からトラムで約30分:ただし一部便のみ市内駅が使われる)と郊外の駅が利用される。
列車も1等車と食堂車を無くした2階建て4両編成の専用車両が新造され、従来の車両より収容人数を20%増やした。

手荷物も1人1個(55cm×27cm×15cm)に制限され、それ以上は予約時で1個5ユーロ(約610円)、予約後の追加は10ユーロ(約1200円)、当日は40ユーロ(約4800円)となり、1人最大2個まで。座席の電源使用は2ユーロ(約240円)、ペット(6kg以上もしくはキャリーバッグの大きさが手荷物の規定サイズを超える場合)の同伴は30ユーロ(約3700円)、乗車プラットフォームなどのSMS通知サービスが1ユーロ(約120円)かかる。乗車券はOUIGO専用のホームページで購入し、出発4日前になると登録したメールアドレスに送られる。車内検札が無いため発車30分前にチェックインが必要で、その際、乗車券の印刷を忘れた場合は別途5ユーロ(約610円)かかる。なお乗車券の購入は出発4時間前まで可能だ。


このように制限以上は運賃にサービス料金が追加されるが、それでも欧州ではLCCとの価格競争がすすんだ結果、日本と比べて都市間移動ははるかに安い。例えばパリ・マルセイユ間は約890km(約3時間)あり、営業キロは東海道・山陽新幹線の東京・広島間(約4時間)に相当する。同区間をのぞみ号で乗車した場合、通常18550円はかかり、単純比較するとプレムでは最大6分の1以下、OUIGOでは郊外の駅を使うものの最大10分の1以下の価格で同じ距離を列車移動できることになる。
(加藤亨延)

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OUIGO *フランス語/英語
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