印刷不況、といわれているこのご時世。書類は電子化、電子書籍などの台頭で、年賀状でさえ、最近は昔に比べると随分減った。
そんな今だからこそ、原点回帰で印刷というものを見直したい。
印刷の原点とは何かといえば、それは活版印刷なのである。

年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?


活版印刷とは「活字」と呼ばれる鉛でできた文字を組み合わせ、その版にインクを付けて紙に転写する、至ってアナログな印刷方法のこと。
起源は遙か昔の中国。中世ドイツで隆盛し、ヨーロッパでは印刷の基礎となる。やがて日本にも伝わり印刷の基礎となったが写植の登場によってすっかり廃れてしまった。

1970年代には一線から退いて消えてしまったかと思いきや、今でも少ないながら全国の印刷会社などで脈々と生き残り続けている。
そんな活版印刷をメインとする大阪の印刷会社さん、大枝活版室さんにお話を伺ってみた。

年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?
レトロで小さな印刷会社。中はほとんど手作りされたそう。


なぜ今の時代に活版印刷をはじめたのか。 
「はじめたのは2年前です。当時、私がフリーランスのデザイナーだった頃、10年以上前に出入りしていた廃業寸前の印刷所に行ったのがきっかけです」
何十年も時が止まったボロボロの印刷所に残されたのは、埃まみれの活版印刷機と活字。これを使って、昔のように再び人の出入りする活気ある印刷所にしたいと、印刷工と組んで印刷所再生をスタートしたという。

すっかり忘れ去られていた古い機械はきれいに磨き上げ、印刷会社自体も手作りで再生。デジタルのこの時代に、古い技術が復活した。


「大枝活版室には現在、大型の活版印刷機ドイツ製の「ハイデルベルク社プラテン」が1台と手動の簡易活版印刷機「手キン」が3台あり、表現の種類によって使い分けています」

年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?
レトロな黒光りが魅力的。


年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?
手動の手キンもどこかレトロ。


予約をすれば手動の活版印刷の機械を自ら触れて動かし、実際に印刷をすることもできるそうだ。結婚式を控えるカップルが、結婚式で一人一人の方に手渡すサンキューカードを作り上げたことも。
そんな活版印刷の刷り上がりといえば、普通の印刷にはでないレトロな雰囲気が持ち味。

年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?
掠れと凹凸感が魅力。


「印刷の特徴としては、印刷の際に紙に圧がかかり凹凸が出るので独自の風合いが生まれます。
また一枚一枚印刷するため、紙の種類やインクの量によってかすれでるのが面白みの一つでもあります」
昔とは異なり、いまではパソコンで様々なフォントやデザインなどを造り金型として使用できるように。デジタルとうまく融合し、活版印刷は昔よりもぐっと表現方法を増やした。

年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?


懐かしい風合いで人気を集める活版印刷だが、そのうらで長く印刷業を続けていた会社や印刷工が廃業しているのもまた事実。
そんな活版印刷を間近で見て知ってもらいたい、ということで大枝活版室さんでは「集う活版印刷」というイベントも開催予定だそう。
「普段は事務所兼印刷所ですが、その日だけは自由に出入りしていただき印刷機や活字を実際に見ていただいたり、大枝活版室のオリジナルの紙製品の販売、ワークショップなどを行う予定です」と、活版印刷の周知に意欲的。

年賀状に寒中見舞いに風合いレトロな「活版印刷」いかが?


大枝活版室さんでは名刺に葉書に年賀状などの印刷を請け負っており、来年用の年賀状印刷の受付も開始しているそうだ。


デジタルに比べると時間も手間もかかるものの、手作りの風合いや偶然性の独創性を詰め込める活版印刷。これからの季節は年賀状や寒中見舞いと、印刷物の取り扱いが増える時期。今年は目先をかえてこんな印刷を贈り物にしてみては。
(のなかなおみ)