アニメ&マンガ界の「へぼキャラ」として輝く星・ヤムチャ。

テレビアニメ『ドラゴンボール超』放送中の今、改めて『ドラゴンボール』全42巻(集英社)を読み返してみたところ、ヤムチャもとりあえず天下一武道会の予選は通過してきたわけだし、「思ったよりも弱くはなかった」ことがわかった。


でも、そうなると、改めて疑問が起こる。なぜこうも「へぼキャラ」として語り継がれるまでになってしまったのか。
考えられる理由を以下に挙げてみたい。

1・やられっぷりが悲しすぎる


強敵相手にではなく、種を蒔いて作られた量産型の「栽培マン」に抱きつかれ、自爆に巻き込まれたというやられっぷりが衝撃的すぎた(第215話)。
また、人造人間に殺されかけたときも、そうと知らず本人たちに「あんたらは見なかったか? 殺人をやらかした二人組がどこいったか」と声をかけてしまい、エネルギーを奪われるという情けなさが、悲しい(第338話)。

2・ポジティブすぎる性格


天下一武道会で再会た孫悟空の戦いぶりを目にし、「すごい……あいつますます腕をあげたな……もうとてもたちうちできん」と言ったり(第46話)、レッドリボン軍に殴り込みをかけた悟空に加勢するブルマに頼まれると「とんでもないあいてだぜ……いいだろう……軟弱な都会にあきあきしてたところだ」と大口をたたいたにもかかわらず、悠長にかまえて亀仙人やクリリンなどを誘って行き、駆け付けたときにはすでに悟空が全滅させていたり(第93話)。
挙句、「ちょっと前まではほとんど互角だったのになあ……」(第97話)と言い、別れるときまでも「こんどの武道会では悟空をぎゃふんといわせてやるからな!」(第112話)と、果てしのないおめでたさを炸裂させている。


3・ビッグマウスすぎる習性


よせば良いのに、ついつい出てくるビッグマウス。悟空を初めて会ったときには「きさまらそんなに天国を旅行したいのか」と言ったり、天津飯と初めて対戦したときには「あっというまに白目をむかせてやろう」と言ったりしていた(ちなみに、白目をむいて倒れるのは自分)。

4・技がやっぱりショボい


強敵相手にも良い場面で威力を発揮してきた「太陽拳」を持つ天津飯や、高速回転で切断するという派手さを持つ「気円斬」を持つクリリンなどに比べ、修行してもしても出てくる技はいまひとつ特徴のない「狼牙風風拳」だったヤムチャ。後に新技「繰気弾」を繰り出すが、あっという間にダウン。

5・キャラかぶり


後にミスター・サタンが出てきたことで「ビッグマウス」というキャラかぶりになり、存在感が薄まってしまった。
さらに、大きくなった孫悟飯とも黒髪短髪長身ビジュアルがかぶりになり(頬の傷の有無で見分けないとわからないときも)、余計にお役御免になっていった可能性はある。


6・犬を助けてすらいない


同じくマンガ&アニメ界の「へぼキャラ」として親しまれている『キン肉マン』のテリーマンは、全然活躍していないものの、序盤に「迷い込んだ犬を助けるために新幹線を止めて失格になってしまった」という大きな美談を持っている。でも、ヤムチャは犬を助けてすらいない。おまけに、あまり人望がある感じもない。
ウーロンだけがいつまで経っても「優勝」を唱え続け、ルールも知らないのにバッターボックスに立つたびにただ「ホームラン!」と叫び続ける野球オンチのお母さんのようになっていた。

単に「弱い」だけでなく、やっぱりいろいろ理由があって、みんなの記憶の中に今も生き続けている「へぼキャラ」ヤムチャ。
それはもはや彼にとって賛辞なのかもしれない。

(田幸和歌子)