10万円のスマートコーヒー焙煎機って? プロの技をスマホで再現「The Roast」

今、コーヒー市場では、「サードウェーブ」として、豆にこだわったスペシャリティコーヒーがトレンドとなっている。コーヒー豆の産地や銘柄にまでも、ユーザーがこだわりを持つようになった。

次の4番目には何がくるのか、各所でさまざまな予想がされている。このような中、パナソニックが「フォースウェーブ」として次のことを打ち出してきた。生豆から自宅で焙煎できる「自宅焙煎」だ。

通常の焙煎機だけでは物足りない人に


10万円のスマートコーヒー焙煎機って? プロの技をスマホで再現「The Roast」

「物語を届ける」というコンセプトの下、「モノ」ではなく「コト」へとシフトしたパナソニックの新たな施策の第一弾が、「自宅焙煎」の機会の提供だという。4月上旬から焙煎機の提供を予定している。

しかし、無類のコーヒー好きなユーザーたちにとって、ただ焙煎機の提供だけでは物足りない。サードウェーブを経験し、「味へのこだわり」や「道具・器具へのこだわり」が強く、深くなっているからだ。

そこで同社は、

1.世界中から厳選された生豆
2.生豆に合わせた世界一の焙煎士による焙煎プロファイル
3.温度・風量制御がきめ細やかな家庭用熱風式焙煎機

という「生豆・焙煎プロファイル・焙煎機」の3つをセットで提供。このサービスのことを「The Roast(ザ・ロースト)」と名付けた。スマートコーヒー焙煎機「AE-NR01」と、定期頒布の生豆パックをセットで販売する。「AE-NR01」の価格は10万円。生豆は3種セットが月額5,500円、2種セットは月額3,800円。

10万円のスマートコーヒー焙煎機って? プロの技をスマホで再現「The Roast」
「The Roast」


コーヒーの美味しさの9割は生豆と焙煎で決まる


パナソニックによると、コーヒーの味わいを究極に追求すると、最後にたどり着くのは「生豆の品質」と「焙煎方法」だという。なぜなら、コーヒーの美味しさの9割は生豆と焙煎で決まるといわれているからだ。その割合は、「生豆:焙煎:抽出=8:2:1」だそうだ。

家庭用焙煎機は、すでに各社から販売されてはいたが、“ただの焙煎できる機械”止まりだったという。しかし、このザ・ローストが新しいのは、仕入れのプロが厳選した、世界でも有数の高品質な生豆を、「世界一の焙煎士」による焙煎で、自宅で好きなときに好きなだけ、できたて・淹れ立て本格コーヒーを楽しむことができる点にある。

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発表イベントに登壇した焙煎士の後藤直紀さん(左)と、生豆の輸入を担当した石光商事の荒川正臣さん(右)


スマホアプリで焙煎プロファイルを送信


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さらに、ザ・ローストが新しい点がある。それは、スマホアプリから焙煎プロファイルを送信したり、焙煎状況を確認できたりすることだ。

まず、あらかじめインストールした専用アプリで、生豆の袋のQRコードを読み取る。すると、スマホアプリ画面に、いくつかの焙煎プロファイルが現れ、味チャートや焙煎士からのコメントを見ることができる。ここから気分に合わせて好きな焙煎プロファイルを選択し、焙煎機に送信するのだ。

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その豆の最高の美味しさを引き出す焙煎具合は、プロによる長年の経験と勘によってつくられる。それがプロファイルにあらかじめ仕込まれている。

焙煎機に送信し、焙煎機に生豆を入れてスタートボタンを押せば、あとは焙煎機がすべてやってくれる。焙煎が終わり、豆をミルで挽き、抽出して淹れれば、焙煎仕立て・挽き立て・淹れ立てという、究極に贅沢なコーヒー体験が我が家にやってくる。



焙煎プロファイルを手掛けた焙煎士は世界チャンピオン


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焙煎士の後藤直紀さん

ザ・ローストのこだわりぶりは、目に見えないところで深い。今回、36種類もの生豆に対し、それぞれ2~3通りの焙煎度の焙煎プロファイル100パターン以上を作成したのは、2013年「World Coffee Roasting Championship」でチャンピオンに輝いた日本人焙煎士、後藤直紀さんだ。

後藤さんは、生豆ごとに「浅煎り・中煎り・中深煎り・深煎り」の中からふさわしい焙煎度合を選び、焙煎プロファイルを作成。その焙煎豆によるコーヒーの「香り・酸味・苦味・後味・ボディ」の5項目のバランスをチャートに表したものや、こまかな味の解説も添えられている。

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焙煎後の豆を挽く後藤さん

いくらコーヒーへのこだわりが強くなっているとはいえ、ユーザーはあくまで素人である。なかなか「味を選ぶ」のはむずかしい。そこで、これらの情報を参考に、その日、その都度のシーンに応じて、味を選び分けることができるというわけだ。

焙煎士に聞いてみた


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挽いた豆を抽出する後藤さん

ところで、豆ごとの味を知る目安となるチャートの項目のうち、香り・酸味・苦味・後味は分かる。しかし、「ボディ」とは何のことなのか? 本格焙煎コーヒーを自宅で楽しむからには、ある程度、予備知識が必要である。焙煎士の後藤さんに聞いてみた。

「ボディとは、液体の食感のことです。コクにもつながるものです。もっと分かりやすくいえば、“なめこ汁”と“普通の味噌汁”との食感の違いです。なめこ汁はとろっとしたボディがありますよね。

お酒の世界では“マウスフィール”ということもあります。例えば『シロップのようなボディ』『ふくよかなボディ』など。サラサラしたものだと『ウォータリー』と言ったりします。

チャートでは、ボディは強いほど高得点にしています。紅茶のようにさらっとしているボディの場合は、点数を少なくしています」

また、後藤さんはそれぞれのプロファイルごとに、コメントも提供している。細かな味の表現が豊富だ。例えば、次のようなものがある。

「紅茶のように軽い口当たり。ダージリンやピーチ、白い花を思わせるフローラルな香り。」

「蜂蜜のような質感。微かに桃を思わせる甘い香り。バランスがとれた端正な味わい。」

「なめらかで量感のある口当たり。香ばしさの中に重層的な甘い香り。」

コーヒーに、ピーチを思わせる香りや蜂蜜の質感、甘い香りがあるとは驚きである。後藤さんによれば、「より伝わりやすい味の表現を心がけています。“そんな味しないよ”と言われることもありますが、表現したものを読んで飲むと、記憶に残りやすいということもあります」とのことだった。

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その時々の気分やシーン、一緒に食べる料理やスイーツによって味を選び分けるためには、この味チャートとコメントがヒントになる。パナソニックによれば、今後は、どんな食べ物と合うかなどのペアリング情報を提供する予定もあるそうだ。

「今日はあっさりした紅茶系のフローラルな浅煎り焙煎で、爽やかな朝を満喫しよう」などと、朝のひと時を味わったり、「今夜は疲れたから濃厚でコクのある重厚感あふれるボディの深煎り焙煎で、映画でも鑑賞しながらリラックスしよう」などと、帰宅後のプチ贅沢時間を味わったりできる日は近い。
(石原亜香利)

※画像や動画で紹介した商品の仕様は、撮影当時のものです。サービス提供時には変更になることがあります。


取材協力
Panasonic
後藤直紀さん