なぜ人はもちふわ系のパンが好き? 味覚の専門家に聞いてみた

人気コンビニエンスストアのパンの売り上げランキングなどを見ていると、ホイップやクリームを使用したふわふわ、もちもち系のものばかりが上位にランクインしている。なぜ人はこれほどまでに、もちもち・ふわふわしたパンが好きなのだろうか。
味覚のエキスパートにその理由を聞いてみた。

次々と開発されては伝説となるもちふわ系のコンビニ菓子パン


よくSNSやブログ上などで話題になる、コンビニ菓子パン。多くの場合、もちふわ系である。例えば、セブン-イレブンの「もちぷにゃ」や、ローソンの「もちぷよ」、ファミリーマート「ぷにほっぺ。」、スリーエフの「もちぽにょ」などがある。いずれも、もちもち食感の生地をベースに、中身はミルクが濃厚でコクのあるクリームがたっぷり入っているスイーツのような菓子パンだ。

さらに、ホイップクリームが入ったパンや、シュークリーム、ふわふわのパンケーキなども同様に多くのファンがいる。

このように、ふわっふわでもっちもち、クリーミーでコクがある仕様になっているものが、注目を集めることが多いようにみえる。


なぜ人はもちふわ系のパンが好き? 味覚の専門家に聞いてみた


なぜ人は「もちふわ」系が好き?味覚専門家に聞いてみた


なぜ人はもちふわ系のパンが好き? 味覚の専門家に聞いてみた

よく考えてみると、人はなぜもちもち、ふわふわした食感や味わいを、そこまで好むのだろうか。考えられる理由を一般社団法人日本味育協会 の代表・宮川順子さんに聞いてみた。

1.人は食べやすい・消化が良い食感を本能的に好む
「私たちは、離乳食の段階から始まる、がっしり、ガリガリしたものではなく、柔らかくふわふわ、とろり・もちもちとした食感を良しとしており、本能的に好む傾向があります。なぜなら、これらは、『食べやすい』『消化が良い』を伝える食感だからです」

2.米を主食としてきたため
「歴史的に見て、日本人は米を主食として食べてきた民族であることから、とくにもち米に含まれる『アミロペクチン』のようなもちもち感、つまり“やわらかいけれど、伸びて噛み切るには力を要する感覚”を好みます。このため、ヒット商品の材料には、小麦粉だけでなく、粘っこい食感を生む『米粉』や、粘りを出す各種『でんぷん』が配合されていることが多いです」

3.もちもち系は舌の上での滞在時間が長い
「さらりと舌の上を通過する食品よりも、粘度が高い食品のほうが、舌の上での滞在時間が長いことも、好まれる理由の一つといえます」

4.ふわふわ系はうま味や甘みなどを強く感じやすい
「ふわふわのものは、口に入れると、素早くほぐれて、おいしさを口全体で感じることができるので、うま味や甘みなどを強く感じます」

もちふわ系パンに甘さは必須条件?


ところで気になるのは、もちふわ系パンは多くの場合、「甘み」を伴うことが多いことだ。やはり、もちふわ系をおいしくさせるためには、甘さは必須条件となるのだろうか?

「甘さというより、砂糖の保湿力が重要です。砂糖を加えた泡は、粘り強く、きめが細かくなりますから、ふわふわを保つのに必要です。
また、柔らかい“もちもち食感”を維持するのにも、砂糖の保湿力が必要です。さらに、甘さは本能的に誰にも好まれる味なので、甘いほうがおいしいと感じさせやすいですね」


(石原亜香利)

取材協力
一般社団法人日本味育協会  代表 宮川順子さん
都内代々木で、料理教室Convivialite′Miyagawa を主宰。長男のアレルギーを機に、親子共々の「食の重要性」を実感。「手作り」「スローフード」に取り組み、調理師 、フードコーディネイター、食育コーディネイター 他各種資格を取得。フードソムリエ、雑誌、新聞などにレシピを提供。現在は、料理教室を主宰する傍ら、一般、プロを問わず、協会代表として味覚教育に関する講習や料理技術の講師を務める。