彼女が「バーコードリーマン」を愛する理由
あえてバーコードにこだわった、「ハゲかわいい」雰囲気が魅力です。
「バーコードリーマン」―髪がバーコード状態のおじさんサラリーマンのことだが、世間的には「いっそ坊主にすればいいのに」とか「みっともない」とか散々に言われちまう彼らを、愛情たっぷりに描いているイラストレーターがいる。

パッと見、小田原ドラゴンのマンガにも似た雰囲気の絵だが、それを描いているのが、おっとりした女性だから、驚く。

小野寺奈緒さん。男性誌やビジネス誌で活躍する、まだ22歳の女性である。

彼女がなぜ「バーコードリーマン」を描き始めたかと言うと……。
「最初はお父さんに『似顔絵』を描いてって言われたのがきっかけで。父はバーコードじゃなくて、おでこが後退気味ぐらいなんですが、それまで女の子ばっかり描いてきて、おじさんを初めて書いてみたら、すごく楽しかったんですよ!」

それ以来、毎日1人以上のペースで、おじさんばかりを描くようになったそうだが、「バーコード的なもの」の誕生は偶然だったとか。
「頭をあらくガガッと塗ったイラストを見て、デザイナーさんが『このハゲた感じがイイ』と言ってくれたんですよ。
確かに、それまでよりも肩の力の抜けた、イイ感じが出ていて……」
ちょうどファッションイラストレーターになるか迷っていた時期で、「ハゲたおじさんの絵」に腹をくくったのだという。
「今では電車の中でも、イイ感じのおじさんをついチェックしちゃいます。白い紙を見ると、思わずバーコードリーマンを描いちゃうくらいです(笑)」

そんな「バーコードリーマン」の魅力は、どんなところなのか。
「お父さんが頑張って手に入れた、そこそこ安定した生活……という感じ。可愛くて、ちょっと可笑しくて、哀愁がある。日本のサラリーマンならではじゃないですか?」

個人的には「ちょい不良(ワル)」とか、ギラギラした「ラテンおやじ」みたいなのは、どうも苦手。
哀愁漂う、かなしかわいい「ザ・日本のサラリーマン」=バーコードリーマンに、まだまだがんばってほしいと思います。
(田幸和歌子)