おおらかだった時代の「理科」の本を読む
表紙からして、「理科」感が乏しくてステキ。ちなみにその現代版ともいえる<a href="http://www.excite.co.jp/book/product/?k=%89%C8%8Aw%82%C8%82%BA%82%C7%82%A4%82%B5%82%C4%81@%8Bv%93%B9+%8C%92%8EO&target=">『科学なぜどうして』</a>という本が発売中ですが、中身は現代に合わせてアップデートされています。
親戚の家に行ったとき、おばちゃんが「好きな本を持っていっていい」と言うので、もらってきた『理科なぜどうして一年生』(偕成社)。1957年1刷の、古い本である。


これを読んでみると、「理科」の解釈のおおらかさにビックリするところが多々ある。
たとえば、「にわとりが、たまごをうむとなくのはなぜですか」。この問いに対しては、「ちいさなからだで、あんなにおおきなたまごをうむのは、にわとりもずいぶんほねのおれることでしょうね。(中略)『ああ、うれしい』 もし、にわとりにことばがあったら、きっとこんなことをいうでしょう」と、にわとりの気持ちを推し量った答えをしている。
にもかかわらず、「きは、きられてもいたくないのですか」には、「きや くさには いたいのをかんじるところがないのです。だから、はさみできられても、ひをつけられても、なんともないのです」とキッパリ。今のお父さんお母さんなら、「まぁ、なんてヒドイこと教えるのかしら!?」と怒り出しそうです。

また、「いもむしは、どうしてちょうになるのですか」の問いには、「もし、いもむしが、みんなちょうにならないで しんでしまったら、いもむしはこまります」と、答えになってるのかなってないのかわからない回答。
「てるてるぼうずで、あめがはれますか」の問いには、「さんた」くんという男の子のエピソードを用いて、「てるてるぼうずでは、あめをとめることができないのです」と、結局、夢ぶちこわしな返しをしている。

さらに、驚いたのは「にんげんのせんぞは、さるですか」。
これに対する答えは「さるは ねずみより りこうです。にんげんは さるより りこうです。
(中略)どうぶつには、りこうでないものも、りこうなのもいますが、りこうなどうぶつほど、あとになってでてきました」と、優劣で回答している。うるさい親に噛み付かれないか、心配になってきます……。

また、他にも、1968年1刷の『なぜなに理科2年生』(小学館)では、「小学二年生は、どのくらいねたらいいですか」「どうぶつで、いちばんはやくしぬのは、なんですか」などの難問を紹介。
ちなみに、現在、発行されている「理科」の本を見てみると、つくりは同じようでも、設問・解説がまったく違って、かなり現実的! 時代の流れを感じてしまうのでした……。
(田幸和歌子)
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