エスカレーターを「高速」にする理由
「高速エスカレーター」なるものが突如出現したわけではなく、速度設定次第で、たいていどれも「高速」になれるわけです。
つくばエクスプレス秋葉原駅をはじめ、最近、ときどき見かけるようになった「高速エスカレーター」。
その秋葉原駅の場合など、普通の速度のものと並行して動いているのだが、実際に乗ってみると、隣の「普通」に乗ってる人をぐいぐい追い抜いていき、確かに速い。


では、そもそもなぜ高速が増えているのか。
以前、「エレベーターの積載量」取材でご登場いただいた三菱電機株式会社の広報担当・泉さんに聞いてみると、こんな答えが。
「皆さん誤解されてますが、『高速エスカレーター』というものはないんですよ」
え!? どういうことですか!?
「高速エスカレーターというものを新たに入れているわけではなく、インバーターで可変速のシステムになっているので、その設定を速くしているというだけなんです」

エスカレーターの速度は建築基準法で、勾配が8度〜30度未満の場合、分速45メートル以下、勾配が30度〜35度以下の場合、分速30メートル以下と決まっているのだとか。
法律の範囲でOKなら、全部速いほうがいい気もするが、一般的には分速30メートルが多く、「高速」設定をしている場所でも、たいてい通常速度と二本だてにしている。その理由は、
「若い人は急いで行きたいでしょうけど、あまり速いと、足がついていけなくて年配の方が転ぶなどの危険性もありますから、全部速くしちゃうわけにはいかないんですよ」と泉さん。
この速度は、設置場所、つまり駅やデパートなど、「運用側」が設定しているのだとか。


そのため、同じエスカレーターでも、実は時間によって速度が変わる場所もあるそうで、
「ショッピングセンターなどは、おじいちゃんおばあちゃんの多い日中は、分速25〜30メートルぐらいでゆっくり流しておいて、若者の多い夜などは、分速35〜40メートルで流すところもあるそうですよ」

ところで、そもそも可変速にしているのは、急いで歩きながら通る人のために、片側を「追い越し用」にあける行為を避けるためなのか。
「メーカー側では追い越しは危険なので、本来禁止しています。それよりも、インバーターのシステムを入れているのは、『省エネ』のためなんですよ」
通常、のぼりおりするステップ付近に「人感センサー」があり、エスカレーターに人が乗っていないときは、省エネのために止める、あるいはゆっくり流しておくという。つまり、速度が変えられるのは、「速さ」の追求でなく、あくまで「省エネ」目的なのだった。

ただし、このような工夫をしているにもかかわらず、「高速」設定のエスカレーターを、さらに駆け足でのぼる人が多いのも、事実。
どこまで急ぐんだよ!? という私も、つい駆け上がることが多いけど。

「急ぐ人のために片側をあける」は半ば、暗黙のマナーとなっている一方で、最近は「危険行為」として、アナウンスするデパートなども出てきている。
そう、本当は「危険」なんです、アレ。
(田幸和歌子)