髪の毛フンワリ、アフロな仏様に会いに行く
金戒光明寺は会津藩の本陣になったことから、新選組関連のお寺として有名だが、こんなところにこっそりアフロ。新選組とは特に関係はない。なお、12月3日まで「秋の庭園・山門」を特別公開中。
最近、神社仏閣巡りが密かなブームと聞く。
そんな中、京都に面白いお地蔵様がいると噂を聞いた。
それは金戒光明寺。地元では黒谷さんと呼ばれ親しまれているお寺である。
ここは元々、浄土宗における最初の遺跡の場。そこにどんなお地蔵様が鎮座しているのか、足を運んでみることにした。

例のお地蔵様は境内のどこかにある……と聞いて、探し出すこと小一時間。
すると広いお墓を守るようにひっそりと、巨大な頭の仏様が鎮座しているではないか。
ああ、これは立派な「アフロ」だ。
頭の大きさは一抱えほど。アフロの下に隠されたお顔は非常に穏やかなのだが、どうしてもそのフンワリモッコリとした頭に目がいってしまう。

さぞや髪の毛に御利益のあるお地蔵様なのかと思いきや、正確に言うとこれはお地蔵様ではない。「五劫思惟像」と呼ばれる仏像である。
「五劫思惟」とは、阿弥陀如来が阿弥陀如来となる前に積んだ修行のこと。
つまりこのアフロな仏様、ズバリ阿弥陀如来様なのだ。
ちなみに「劫」というのは、時間の単位。天女が3年に一度天から降りてきて、大きな石を袖で一撫で、それを繰り返すうちに岩がすり切れて無くなってしまうのが1劫……と、何とも壮大なスケールの単位である。

そんな長い修行の中でどんどんと髪が上や横へと伸びてしまった、というのがアフロの真相だ。
これだけ見事に重力に反する髪型になるとは、もともと天パ質だったのか、それとも聖人故の奇跡なのか。何にせよ、私なんかの凡人には到底行き着くことのできない無の境地がそこにあった。


非常に珍しい像なのだが、このお寺限定というわけではなく、他のお寺でも見ることができる。
が、その中でも特にこちらの五劫思惟像における、頭の立派さは有名だ。他のお寺のものより「アフロ分」が豊富なため、見応え抜群である。

そんなアフロ像、いつごろの時期に作られたのか聞いてみたところその時期は不明。
こちらのお寺はかつて、明治の廃仏毀釈により随分な数の像やお地蔵様が破壊される被害にあったいう。が、この像は綺麗に残っている。

お寺さんが守ったという説もあればそれ以降に作られた像という説もあり、静かな雰囲気を持ちながら、なかなか謎に満ちた仏様であった。

せっかく思考の秋。深まる京都のモミジと一緒に庭園や阿弥陀如来由来の像などを見て、思考にふけるのも楽しそう。
もちろんそのラインナップに五劫思惟像はお忘れ無く。
(のなかなおみ)