羽根つきの罰ゲーム、なぜ顔に墨を塗る?
右側が「よりかわいい!? ウランちゃん」
お正月の子どもの遊びといえば凧あげ、独楽まわし、羽根つきである。
日々コンピュータゲームに明け暮れている子どもたちが正月になったからといってどれだけこの遊びをしているのかは別としても日本の伝統的な文化としては今もちゃんと生きている。


現在いいお年の私は、さすがに誰も彼もが正月に羽根つきをしていた時代に育ったわけではないが、それでも正月に羽根つきをした記憶がある。
そして、現に当時使っていた羽子板も姉の分と合わせてまだちゃんと持っている。
年齢がバレしょうでちょっと恥ずかしいが鉄腕アトムの妹、ウランちゃんをイメージしたであろうウランちゃんもどきの女の子の絵柄の羽子板だ。
姉と私の羽子板は全く同じ絵柄だが当時「お姉ちゃんのより、私のウランちゃんのほうがかわいいよ」と言っていたことを思い出してしまった。今見てみると、多少絵の具の塗り方が違うせいで顔つきが違って見えるがどっちもどっちといった感じだ。
何をそんなにムキになっていたのか、今思うと妙におかしい。

ところで、羽根つきと言えば罰ゲームとして羽根を落としてしまった方の顔に墨をつける、というのが定番だ。
実際、今でもたまにテレビ番組のベタなお笑いシーンなどで見かけることがある。
そう言えばこの顔に墨をつける、というのはどうしてなのか? ということで、さっそく羽根つきについて調べてみた。

羽根つきは室町時代に中国から羽根を蹴る遊びが日本に伝わったことが起源とされている。
当時は宮中での遊びで戦国時代から羽根つきに厄払いの意味が加わり、江戸時代は年末に邪気よけとして羽子板を贈る習慣が生まれたという。
そして、ここからが本題。

羽根を下に落としてしまうと墨を塗る理由について、とてもおもしろい説を実際に羽子板を作っている方が教えてくれた。
「羽根つきの羽根はムクロジという実の種に鳥の羽をつけたものです。ムクロジは『無患子』と書きます。羽根つきは打ち合って競争する競技ではなくて、お互いに無病息災を祈りながら長く打ち続けるものなんです。今のように医療が発達していなかった時代は多くの人たちが感染症など病気で亡くなりました。中でも子どもの死者は多かったようです。それで、子どもが病気にかからないように、と子どもの健康を祈ったわけですね」

羽根つきはどれだけ長く続けられるかが大切ということをうっかり忘れかけていた。
それにしても「子が患(わずら)わ無い」で無患子(ムクロジ)とはよく名づけたものだ。

「病気のもとは昔は牛や馬の血を吸う蚊だと考えられていたんですね。そしてその病気のもととなる蚊を食べてくれるのがトンボです。そこで、羽根をトンボにたとえて空気中に打つ……病気のもととなる蚊を食べてもらう、というわけです。墨を塗ることがいつ頃から行われていたのかはっきりわかりません。
でも墨を塗るのは鬼などが墨、黒い色を嫌うというところから、魔よけの意味をこめて塗るようになったようです。羽根を下に落として無病息災の祈りが途切れてしまっても、墨を塗れば悪いものから身を守れる、ということのようです。これがいつの頃からか遊びの中で罰ゲーム的なものに変化していったようです」

あくまでもこれは色々な人に聞いた一つの説ですよ、ということでお話をいただいたのだが墨を塗るのは魔よけだったというのはとても説得力がある。
ん十年ぶりで日の目を見た我が家のウランちゃんもどき羽子板。すでに無事、大人となってはいるが、せっかくなので今年の正月には無病息災を願って羽根つきをやってみようと思います。
(こや)
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