台湾の日本語雑誌を読んでみた
日本人が読んでも、発見がたくさんある充実の内容でした。
台湾での日本人気は相当で、日本語を学ぼうとしている人も多い。
で、ご紹介したいのが、台北で発行している雑誌『階梯日本語雑誌 日本語ジャーナル』だ。


外国で作られた日本語モノというと、素っ頓狂なものを期待する人が多いかもしれないが、これは言葉の上辺だけでなく、「生活習慣」「文化」などを掘り下げた深い内容のもの。
たとえば、06年11月号の内容紹介は、
「日本では木々の葉が赤や黄色に美しく染まり、多くの人たちが行楽地へ紅葉狩りに行く季節になりました。また、『運動の秋』『読書の秋』『芸術の秋』などとも言われるこの時季には……」
と、のっけから高度な挨拶が登場している。

最初のコーナーは、いきなりディープな「途中下車」、そして「日本お祭り文化」「日本的生活習慣」が続くのだが、11月号のテーマは「塩」であった。
「テレビのドラマなどで、招かれざる客が帰った後に家の玄関口に塩をまくシーンが出てくることがあります。これなどは、家の中を穢されたと考え、その家を清める為にまいている訳です」
「サンコンさんがご焼香のとき、間違えて食べちゃった」とか、都市伝説みたいな話があるが、この雑誌は日本人が文章を書いているだけに、そういったおかしなことはまるでない。
逆に、「なぜ清めに塩を使うのか」といった根源的な部分にも言及しているのだ。

また、「流行語と若者ことば」では、「情けは人のためならず」の本来の意味と、間違って使われがちな内容について触れている。
もちろん「人のためならず」の本来の意味は、「人に親切にすることは、めぐりめぐって自分にも戻ってくる」ということだが、ここでは「松本君」にお金を貸してくれと頼まれ、「人のためならず」なら、断ったほうがいいのか、貸したほうがいいのか迷っている。
これ、正しい日本語を知っていても、「松本君」がお金のない理由、必要な理由がわからない限り、結局、どちらが「人のためならず」なのか判断に迷ってしまうところでもある。

さらに、「読書の時間」で扱っている作品は、なんと岡本かの子! 念のため、岡本太郎の母であり、大正・昭和の小説家、歌人だが、ちゃんと読んだことありますか?
かく言う私も、学生時代に先生にすすめられ、少し読んだだけだったりするけど……。

日本人が読んでも十分勉強になる、台湾の『日本語ジャーナル』。
台湾の人は、これをどれだけ理解するのでしょうか。
(田幸和歌子)