時代を先取り? 巣鴨のゆっくりエスカレーター
(上)おばあちゃんの原宿、こと巣鴨の地蔵通商店街。<br>(下)都営線巣鴨駅A3出口のエスカレーター。ゆっくりですよ
おばあちゃんの原宿、こと東京都豊島区巣鴨。毎月4のつく日は縁日で賑わうが、JR巣鴨駅北側のスーパーマーケット「西友」に、地元では有名な「ゆっくりエスカレーター」がある。


お店の入口から2階と地下へ向かうふたつのエスカレーター、どちらもゆっくり。もちろん壊れているわけじゃない。「当店のエスカレーターはスピードを遅くしてあります」の貼り紙がちゃんとある。乗ってみると、これがなんだか別の乗り物の上にいるみたいで、ちょっと心地よいのである。ゆっくりの理由を店員さんに尋ねたところ、「ご年配の方が多いので……若い方にはちょっと(遅いかもしれません)」と、予想通りのお答えを、すまなそうな感じでしてくれた。いや、別に責めてるわけじゃないんだけど……。


このエスカレーターのスピードを実際に測ってみよう。数字にすれば分かりやすいもの。定規とストップウォッチを取り出して測定開始。変な人だと思われたかな。ステップ一段の長さが40センチ、最上段で一段のステップが消えてゆく時間が1.23秒。よって、スピードは毎分20メートルということに。
コネタ「エスカレーターを『高速』にする理由」によると、通常は毎分30メートル、ゆっくりの所で毎分25メートルだというから、このエスカレーターが随分と遅いことが分かる。

さて、巣鴨の「ゆっくりエスカレーター」、都営線巣鴨駅にもあった。とげぬき地蔵方面へ向かうA3出口のエスカレーターで、完成してからまだ1年ほど。こちらも測ってみると毎分21メートルと、西友のエスカレーターとだいたい同じ。幅が狭くて追い越しできず、みんな歩かず乗っている。のんびりしていていい光景。
東京都交通局に尋ねると、やはり、高齢者が多いことに配慮してとのことだった。

巣鴨には大きなビルが少ないせいか、エスカレーターの数も少ない。小さなビルにはスペースの関係上、設置しにくいのだろう。今のところ、巣鴨の「ゆっくりエスカレーター」はこのふたつだけのようである。

(社)日本エレベータ協会のホームページを見ると、高齢になるほどエスカレーターを「速すぎる」と感じる人が増えている。あるメーカーのエスカレーターのカタログを見ると、「毎分15メートルの超低速にも設定可能」の文字が並んでいる。
高齢化社会に向かって、「ゆっくりエスカレーター」、これから増えて行きそうな感じ。

体感してみたい方は、ぜひ巣鴨へどうぞ。
(R&S)

(社)日本エレベータ協会HP