缶コーヒーがずっと「缶」のままなわけは?
JTの「ルーツ アロマブラック」。広口なのにも、ペットボトルでなくて缶なのにも、ちゃんと理由があるのです。
お茶にジュースにミネラルウォーター。
自販機やコンビニの棚に並ぶ、清涼飲料水の容器は今、ほとんどがペットボトルになっている。


軽いし持ち運びしやすいし、何より開けたり閉めたりの“リキャップ”ができて、好きなときに飲めるのもまた、いい。
しかし。

コーヒーだけ、なんで今もほとんど“缶”なんだ?

社団法人全国清涼飲料工業会によると、清涼飲料の容器は、1999年ごろにPET素材と缶の割合が逆転したのだという。近年のデータでは、ペットボトルの割合が全体の実に88.1%。完全に、清涼飲料はペットボトルの世界だ。
それなのに、種類別の割合に目を向けてみると、お茶やジュースと違い、コーヒー飲料だけが缶が71.5%と、時流と逆さまというか、缶圧勝の状態なのである。


最近は、ボトルタイプのコーヒー飲料も出てきているが、それでもやっぱりボトルでも素材は缶だったりする。
なぜそこまで缶にこだわらなければならないのか。「てやんでえ、ウチは『コーヒーは缶に限る』っていう、ひいひいじいさんの遺言を、代々守ってきてんだよ」とかいうような、何かペットボトルには譲れない事情でもあったりするのだろうか。

全国清涼飲料工業会に理由をたずねてみたところ、
「コーヒー飲料は、高温・高圧での殺菌が法律で定められていて、その強度的な面から、スチール缶が多く使用されている、というのが一番の理由です」
とのこと。

広口ボトル缶や、くびれた形状の缶コーヒー、「ルーツ」シリーズで人気の日本たばこ産業株式会社(JT)でも、やはり「殺菌」の工程に注目しているそうで、この加熱による殺菌、要する時間がまた重要なのだそう。
「製造工程で、より高温短時間で殺菌ができるよう開発されたのが、缶の裾部分がくびれた、『ウェストウェーブ缶』です。
サイズ面では、1本飲み切りということを考えたときに、195グラム缶というのがちょうどいいからです」

ちなみに、JTの「ルーツ アロマブラック」、飲み口が、標準的なものより、少し大きめになっているが、これにはこんな理由があった。
「広口キャップにすることで、飲むたびにコーヒーの香りが広がって、よりコーヒーを楽しんで飲むことができるんです。ブラックコーヒーの市場が伸びていることからも、その傾向は強くなっているようです」

ところで、素材面での理由は分かったが、ペットボトル飲料のよさのひとつが、冒頭にも挙げた、リキャップによる利便性。ボトルタイプの缶コーヒーならば、この利便性も獲得できるわけだが、
「少しずつでも飲むことができるので、これが女性に受けています。また、デスクなどで万が一倒してしまったときなどにも安心だという声も届いていますね」

なんとなく、将来的には形状的にはボトルタイプがコーヒーも増えてきそうであるが、素材は缶で、といった流れになっていきそうである。
「ひいひいじいさんの遺言」でもなんでもないわけだが、コーヒー飲料が缶であるのには、ちゃんとした理由があるのです。

(太田サトル)

日本たばこ産業株式会社(JT)HP