中毒的な粉がクセになる「ハッピーターン」に対し、「ルマンド」はというと、かなり細心の注意を払っても、努力むなしく、ポロポロこぼれてしまう繊細かつ上品な儚い味わいで、「深窓の令嬢ってこんなイメージか」などと、勝手な想像をめぐらした存在でもあった。
さて、そのルマンド、発売の1974年から30年以上も愛されてきたロングセラー商品で、私とほぼ「同級生」なのだが、考えてみれば、その意味すらも、私は知らない。
昔から知ってる「上品なクラスメート」は、「いつもヒラヒラのレースのドレスを着ているお嬢様」だけど、そういえば、一度も話したことなかったっけ……みたいな感じか。
直接、株式会社ブルボンに、その名の意味を聞いてみた。
「『ルマンド』は、3代目社長の吉田高章氏が名づけました。フランス風の高級感をイメージしたネーミング候補のなかから選択した、『造語』です」
と言うのは、広報管理課担当者。
「ルマンド」は、そのまんまルマンドであって、意味とか理屈なんかはどうでも良いのかもしれない。
ところで、あのヒラヒラ感は、「独自に開発した製造技術や製造設備により、幾重もの繊細なクレープ生地と甘さをおさえたココアクリームの調和、洋風な高級感」としてファンを魅了してきたそうだが、モテモテを象徴する、こんなエピソードもあるそうだ。
「発売以降、生産が追いつかず、増産増産の連続で、生産設備も昼夜兼行で設置するなど、その後の当社新工場の建設へつながりました。ピーク時は、ルマンドを求めて、問屋さんがトラックを仕立てて、工場まで買い付けにこられたこともあるんですよ」
ところで、ブルボンというと、このほかにも、「エリーゼ」「ルーベラ」「ホワイトロリータ」「ソフスイート」「エルフィーユ」「ブランチュール」など、数々の官能的で甘美な商品名があるが、それらの意味は?
「『エリーゼ』は少女の名前のような可愛らしさをイメージしたネーミングで、『ルーベラ』はフランスゆかりのお菓子であることから名づけた造語。『ホワイトロリータ』はひねってある商品特徴から名づけた造語で、『ソフスイート』は食感のSOFTとチョコチップ・白あんの上品な甘さSWEETを合わせた造語、『エルフィーユ』はエルフ(妖精)の美しいイメージとミルフィーユを合わせた造語、『ブランチュール』は白い(ブラン)とレース状の薄い布(チュール)を組み合わせたものです」
これでもかこれでもかと、たたみかける「造語」! これらが誕生した経緯は……。
「商品が持っている特長、味わい、美しさ、楽しさ、癒しなどをお伝えできるように、何種類ものネーミングの候補をつくり、絞り込み、選択を行います。法令上および一般常識的に問題がないかのチェックを行い、決定します」
名前一つとっても、多くの人に見守られ、愛され、吟味されて誕生している、特別な「お嬢様菓子」なのでした。
(田幸和歌子)