松阪牛は、いつから「まつさかうし」に?
三重県や協議会の統一名、商標登録では「まつさかうし」。かといって通称の「まつざかぎゅう」も間違いではありません。
「この店では、まつさかうしが使われており」――テレビでそんなアナウンスを聞いた小1のわが娘が、素っ頓狂な声で言った。
「ヘンなのー。
“まつさかうし”だって! 生きてる牛みたい」

確かに、以前は「まつざかぎゅう」が一般的な呼び方だと思っていたけど、最近、テレビで聞くのは、たいてい「まつさかうし」だ。
これはいつから? なぜなんでしょう?

三重県庁の農水商工部に聞くと……。
「『松阪牛』については本来、いろいろな名前があったなかで、三重ブランドとして『まつさかうし』をメインで呼ぶことに決めました。ただし、通称の『まつざかぎゅう』と呼んでも間違いではありませんし、これはあくまで県と協議会の制度として決めただけのもので、読み方を制約したわけではありません」
とのこと。

そこで、松阪市役所に事務局がある「松阪牛協議会」に聞いてみると……。
「『松阪牛』についてはいろいろなとらえ方がありますが、生産地域ではもともと『まつさかうし』という呼び方をしています。また、登録商標では、松阪肉は『まつさかにく』、松阪牛は『まつさかうし』となっています」
と農林水産課担当者。
「よく『生きているときは○○うしで、肉としては○○ぎゅうと呼ぶ』なんて言う人もいますが、それは関係ありません(笑)。販売においても、音読みと訓読みの違いだけで、どちらが正しいとか間違いということはないんですよ」と補足された。

ところで、もう1つ気になるのは、地名「松阪」の読み方。「まつざか」ではなく「まつさか」が正しいんでしょうか? これについては、
「県では濁らず『まつさか』と読みますが、濁っても間違いというわけではありません。一般的な呼び方と公的な呼び方を統一するのは、難しいですから」と、前述の県庁担当者。

確かに、三重県出身の友人なども「まつざか」と言ってるけど……。最近、変わってきたということはある?

松阪市役所に聞いてみると……。
「かつては『松阪』でなく『松坂』だった時代もありましたし、『まっつぁか』と言う人もいますし、地域の中でもごちゃまぜだったんですよ。ただ、これは平成17年1月に市町村合併した際に、『地域名は濁らず読みましょう』と確認しました。だから、いろいろ議論はありますが、地名としては正しくは『まつさか』です」(松阪市役所)

ちなみに、同じブランド牛でも、
・「米沢牛」は「よねざわぎゅう」(米沢牛銘柄推進協議会HPより)
・「前沢牛」は「まえさわぎゅう」(前沢牛協会HPより)
・「信州牛」は「しんしゅうぎゅう」(信州牛生産販売協議会HPより)
基本的にはやっぱり「○○ぎゅう」という呼び方が多いよう。
そんななか、テレビが「まつざかぎゅう」でなく「まつさかうし」という呼び方を使うようになってきたのは、“三重ブランド”が浸透してきているということかもしれません。
(田幸和歌子)
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