温州みかんの「温州」って、どこ?
みかんを『広辞苑(第四版)』でひいてみると、真っ先に「ミカン属の一品種の温州蜜柑のこと」と出ていた。温州みかんは、みかんを代表するスターなのだ
年末年始はもちろん、冷え込みが厳しいときに恋しくなるのは「こたつ&みかん」の最強タッグ。故郷を出てひとり暮らしをしている人は、そんな光景を思い浮かべるにつれて、「田舎に帰りてえなぁ〜」なんて思ってしまう人もいるのでは?

そんな、日本人であればまず食べたことがあるであろう「みかん」だが、日本人がよく口にする、代表的なみかんの正式名称は『温州みかん』という。

あ、そうそう。ちなみにこれ、「おんしゅう」ではなく「うんしゅう」と読みます。知らなかった人、今日からこっそり訂正しましょう。

さて、柑橘類には土地の名前が入ることが多い。愛媛県(旧名:伊予国)の『伊予柑』や、宮崎県(旧名:日向国)の『日向夏』などは好例だ。
みかんの名産地といえば、和歌山県を思い浮かべる人も少なくないだろうが、和歌山県の旧名は「紀州国」。
温州の“う”の字も出てこない。
……じゃあ、「温州」って一体どこの地名なのだろうか?

調べてみると意外や意外。温州は、中国の東シナ海に面した浙江省(せっこうしょう)にある市の名前。日本ではなく中国の地名だったのだ。
温州は、中国では「ウェンジョウ」と発音されており、それが日本で「うんしゅう」と読まれるようになったらしい。
……と、温州についてはわかったが、ここで肝心の温州と『温州みかん』の関係については何も判明していないことに気づく。

考えていても仕方ないので、JA和歌山県農の広報担当者に聞いてみた。

「このみかんは、浙江省の温州が柑橘産地であることも手伝ってか、中国原産と思われがち。しかし実際は、鹿児島県の長島地域が発祥の地だといわれています。中国の『橘録』という書物で、温州のみかんを褒める記述があり、温州みかんはそれにちなんで付けられた名前のようです」

なるほど、温州みかんは柑橘類の名産地である「温州」にあやかって付けられた名前だったのだ。ちなみに欧米では、このみかんを原産地である鹿児島にちなんで、「サツマオレンジ」「サツママンダリン」と呼んでいるそう。
英語圏の人々の方が、正しい産地名で呼んでいたとは……。


なお、JA和歌山県農によると、日本の全柑橘類の生産量うち、約3/4は『温州みかん』が占めているそうで、まったく、温州みかんの実力を再確認した次第だ。
さあ、残りの冬も、ビタミンたっぷりのみかんを食べて乗り切りますぞ!
(新井亨)

JA和歌山県農公式サイト