なごり雪はもはや幻?
寒かった今年2月の東京。23区内でもこんなに積もったが、3月になって暖かくなった。「なごり雪」は期待薄の様相
『なごり雪』――イルカのこの曲がヒットしたのは、1975年のこと。すっかり暖かくなったはずの3月終わり〜4月初め、ちょうど別れの季節に降る意外な雪のことだ。
しかしこの季節、北国では雪が降るのは珍しくない。一方、南国ではめったに降らない。東京というのは雪の予報がとても難しい土地なので、意外性という意味でも、歌の舞台にピッタリということになる。

さて、そんななごり雪、近頃東京でもあまり目にしなくなったように思う。これも地球温暖化の影響? というわけで、1960年から2007年までの48年間を10年ずつに区切って、それぞれ何日間の「なごり雪」が降ったのか、調べてみることにした。

ここでちょっと困るのは、「なごり雪」には明確な定義がないこと。今回は筆者の独断で、「春分の日(3月20日または21日)以降に降る雪」ということにしてみた。春を分ける日より後なのだから、まあいいだろう。気象庁の資料から調べてみると、
  1960〜69年……9日  1970〜79年……6日  1980〜89年……12日
  1990〜99年……3日  2000〜07年……2日
という結果になった。年によってだいぶバラツキがあって、1日も降らなかった年もあれば、4日降ったという年もある。平均すると1960〜1980年代は1〜2年に1日、1990年代以降は3〜4年に1日ということに。やはり「なごり雪」に出会うのは、年々難しくなっているようだ。
例えば東京に4年間暮らしたとして、1回見られるかどうかという感じ。

一番最近で降ったのは2007年の4月4日のこと。観測されたのは正確にはみぞれだったのだけれど、降ったのは夕方、郊外では雪だったかもしれない。「なごり雪」は必ずしも「寒い冬」に降るわけではなくて、去年のような暖冬でも、春になって、たまたま冷え込んだ日に降水があれば見ることができる。かなり気まぐれなもの。

歌の最後に、ホームの上で積もることなく融けてゆく雪が描かれている。コンクリート打ちっぱなしの開放的な駅のホームが浮かんでくるが、最近、都会の駅のホームは、だいたいが屋根で覆われてしまっている。「なごり雪」が見られなくなったのは、気候のせいだけではないのかもしれない。
(R&S)
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