
江原啓之、美輪明宏、武田鉄矢、細木数子、加藤諦三……テレビやラジオ、雑誌で活躍するこんな人たちでしょうか。
一方で、近年はウェブでも人生相談がさかんになっています。
さて、そんな検索結果の上位には、聞いたこともない外国人を回答者に据えた、変わった名前のサイトが……。
そのサイトとは「黒いTシャツと青い人生相談 OutsiderVoice.com」、回答者の名前はChip Eckton(チップ・エクトン)。正真正銘の「無名の外国人男性」です。
しかし実際に読んでみると、チップさんの回答は機知に富んでいて、懇切丁寧かつ大胆。さらに「質問文と回答文を英語・日本語の2カ国語で記載」「文章の一部がTシャツのデザインになっている」というこのサイト独自のアイディアも面白いです。例えばチップさんのこんな回答が、Tシャツのデザインになっています。
「つらい記憶の克服とは、過去を忘れることではなく、そこから学ぶこと」
(Conquering your painful memories does not mean forgetting the past, but learning from it)
その評判は徐々に広まり、36万アクセスを獲得した「黒いTシャツと青い人生相談」は、今年1月19日にはついに書籍化。自費出版ながら丸善、紀伊国屋書店、ブックファーストなどの書店でも販売され、オンライン書店でも新しいファンを獲得しているそうです。
なぜこんな変わったサイトが生まれたのか。そもそもチップ・エクトンなる人物は何者なのか。チップさんとは15年来の友人であり、サイト運営から書籍化まで全ての業務を担当しているoutsidervoice氏に話を聞きました。
彼によるとチップさんは米国に在住していたアメリカ人男性。「していた」というのは、実は彼、2007年11月に肺がんのため息を引き取っているのです。遠い異国の地で自分の人生相談が支持を集めている状況は、末期ガンが宣告された後のチップさんには励みになっていたようで、相談者への回答は亡くなる寸前まで続けられていました。
映画から音楽、文学、政治まで、誰もが驚く幅広い教養の持ち主だったそうですが、性格は極めて控えめ。日本人を含めた外国人の友人も多い方だったそうですが、生前は准看護士や英語教師として静かな生活を送っていました。しかし、Tシャツのサイトを始めようとしていたoutsidervoice氏に、「人生相談と合わせてやったらどうだろうか」と提案したのはチップさんだったそうです。
チップさんは生前、「日本人の相談にこたえている自分に、なぜかしっくりくるんだ」と漏らしていました。そして「自分が彼らの部外者(アウトサイダー)だからこそ、公平な視点で物事が語れるんじゃないかな」とも。
普段はあまり交流がない人、遠い存在の人のほうが、不思議と素直に悩みを告白できるもの。そう考えると、「アメリカ人が日本人の人生相談にこたえる」というスタイルは、意外と理にかなっているのかもしれません。
なお彼が回答者を務めた人生相談は、現在も「OutsiderVoice.com」で閲覧可能です。「ぜひとも書籍で読んでみたい」という方は、Amazonなどのオンライン書店からも購入できます。
(古澤誠一郎/studio woofoo)
・「黒いTシャツと青い人生相談 OutsiderVoice.com」HP*現在Tシャツの販売はしていないそうです
・エキサイト商品検索結果『黒いTシャツと青い人生相談』