バルタン胃、メフィラス脳……懐かしの怪獣図解
<a href="http://item.excite.co.jp/detail/ASIN_4092203349/">『怪獣図解入門―平成新装刊』</a>(小学館)<br>「こうなっていたのか!」という説得力と遊び心に彩られた怪獣たちの内部図解が満載です。
ベムラー腕、ドラコきば、ネロンガひふ、ゴモラ肺、ガラモン電子耳……。
この響きにグッとくる30代なかば〜40代前半の方、いるかと思います。


書店で、懐かしい表紙に思わず目がとまった。
『怪獣図解入門』。小学館の児童向けシリーズ「小学館入門百科」のひとつとして1972年に発行された、ウルトラ怪獣図鑑である。それが、2008年のいま、「初版を忠実に」復刻された。

この図鑑の最大の特徴は、怪獣たちの内部図解。骨格や内蔵が描かれた怪獣の解剖イラストのアレだ。

なによりイカしているのが、カリスマ編集者として知られる、故・大伴昌司による、解説文やネーミングセンスのよさ。

たとえば、ゴモラの「ゴモラ腕」は、「ビルをたたきわる力は、ジャイアント馬場の20万倍」。「馬場の20万倍」と言い切られちゃうと、「おお、そうなのか」と、思わず納得してしまう。
ドラコには、「宇宙空間用の肺」と「地球用の肺」の2つの肺があるとか、ケムラーのえらは、「ダイヤモンドの10倍のかたさ」だとか、チブル星人は知能指数5万で、「IBM電算機千台以上」に匹敵するんだとか。
頭が下にあるストレンジな形状が見事なツインテールには、「第1目/第2目」「第1脳/第2脳」と、目と脳がそれぞれ上下2つずつあり、「肉がやわらかく、おいしいので、地底怪獣グドンのエサになっている」んだとか。誰も食べたことなくても、「おいしい」といわれると、そんな気にさせられてしまう妙な説得力がある。


そして、なにより怪獣のもつ謎を、ある意味力技で納得させちゃうのが、「○○ぶくろ」という、謎の器官の存在。
なんでも溶かす溶解液を出すアボラスには、「とかし原液ぶくろ」があり、ゼットンの1兆度(!)の火の玉は、「点火液ぶくろ」というところでつくられる。
まさに万能のキーワード「○○ぶくろ」。ドドンゴにいたっては、「レーダーぶくろ/濃縮けむりぶくろ/保存ぶくろ/とかし液ぶくろ/ジェットぶくろ」と実に5つの袋が存在している。

今回の復刻の理由を、小学館の担当者にたずねてみた。
「私自身、子供のころ好きだった本だというのもあるのですが、テレビやカードゲームの『ウルトラ怪獣バトル』などで、昔の怪獣が再び注目されているという時期だというのも理由のひとつですね」

同書は、カバーを変えたりしながら判を重ねたロングセラーではあるのだが、
「初版について調べてみたら、1万円以上の値段がついてました」

ところで、この小学館入門百科シリーズには、『ウルトラ怪獣入門』という、同じく大伴昌司が手がけた名著があるのだが、
「確かに“読み物”としては、面白いですし、『入門のほうが先だろう』という読者の方の声もありました。
ただ、分かりやすさなどからすると、やはりこの『内部図解』のほうかと」

「大伴昌司氏が考案・構成した文章や怪獣データをもとにしているため、現在広く知られているものとは異なっている部分があります」といった但し書きも含めて、味わい深いウルトラ怪獣の世界。はじめての方も、少年時代に読んだ方も、堪能してください。
(太田サトル)

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