現状をどう乗り切るか。異常事態が長くなればなるほど、そのことばかりに心を奪われてしまう。
当然ではある。それでも、何とか今を乗り越えた上で、事態終息後、つまり『コロナ後』にどう備えるかということを考えておくのは、だれにとっても大切だ。
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緊急事態宣言が5月31日まで延長されることが、連休中の4日に発表された。人の動きが制限され、忍耐を強いられる状況が続くことで、国民一人ひとりも、国全体としても経済的にも、精神的にも疲弊している。
大相撲夏場所も中止が決まり、日本のプロスポーツ界の“出口”もまだまだ見えない。ゴルフでは、女子ツアー14試合、男子ツアー7試合の中止が決定。
再開のメドは立っていない。
スケジュールがはっきりしないまま調整を続けなければならないのは、アスリートにとって本当に大変なことだ。常に万全の状態でいられればいうことはないが、身体的にも精神的にも、なかなかそうはいかない。試合でスイッチをオンにするタイミングに“待った”をかけられたまま放り出されている状態。延々と充電させられているようなものだ。それでも、自分なりの目標を設定しながら気持ちをコントロールし、できる範囲でツアー再開に備えなくてはならない。

再開の時期にもよるが、2020年がこれまでにない“短期決戦”になるのは目に見えている。最初は無観客になるだろう。その時、どんなパフォーマンスができるのか。当たり前の話だが、ツアーができない今の過ごし方が“コロナ後”を左右する。ツアー再開に備えて自分を磨きつつ、通常ならできないような時間を楽しむことができれば一番いい。ツアー転戦中はかなわない家族との時間を過ごす。
ゴルフを通してだけでなく自分と向き合うのもいい。日頃はできない断舎離、料理、友人との交流(リモート)。将来について長い時間をかけて計画を立てることもできるかもしれない。
“コロナ後”、ツアーが再開されても、来年以降、元の形に戻るとは限らない。大会スポンサーへの依存度が高い現在の仕組みでは、企業に体力がなくなると試合が減ってしまう可能性があるからだ。スポンサー企業が疲弊してしまえば、ゴルフの試合どころではなくなってしまう。
ツアーとしては仕組みを改革する機会ととらえる必要がある。
試合という職場の多くを奪われ、なすすべのない選手たちは、多かれ少なかれ経済的に苦しくなっている。それも含めて、心身ともにタフである者が“コロナ後”の勝者となるのだろう。
「新しい生活様式」という摩訶不思議なものが専門家会議から提案された。感染拡大防止のために、もっともな内容も少なくない。しかし、生活様式などという極めて個人的なことは“お上”に押し付けられるべきではない。

それぞれが、ウイルスの感染拡大防止に努めつつ、自分なりに考えた現状での生活様式を作りつつ、来たるべき日に備える。プロアスリートに限らず、誰もがするべきことではある。自分自身を律し、状態を維持しなくてはならないアスリートたちは、人並み以上にそのことを意識しているに違いない。
日本の女子ツアーは、ここへきてようやく「JLPGAトーント新型コロナウイルス感染症対策特別既定」を制定。
(1)2020年はリランキングを実施しないこと
(2)感染症の影響により渡航できない者に特別保証制度を適用する
(3)指定練習日に37・5度の発熱が発見された場合は出場不可
などを発表した。
選手に対しては、さらに以下のことを連絡している。

(1)2020年会費の免除
(2)一般社団法人であるため法令上、基金や融資などはできないが、引き続きできることを模索する。
(3)政府による個人事業主への給付金と貸付金などを紹介。相談窓口を設ける。
(4)大会開催可否の基準とその発表日程(ギリギリまで開催の可能性を探ること)
(5)トーナメント規定を状況変化に伴い、随時検討し変更を加えること。
(6)17試合を行うことができれば、従来通りの規定でシードなどを決めること。
(7)理事報酬の3割を自主返納。
(8)動画配信の『みんなで一緒に乗り越えよう企画』を準備。
と、このような内容だ。
少し遅すぎる感は否めないが、何もわからない状態に置かれていた選手たちにとっては、かすかな道が見えるように感じられただろう。
自分をしっかり保ち、様々な可能性を考えながら時を無駄にしない。今回の“コロナ禍”を乗り越えることよって、より強いアスリートが生み出されることを心から祈りたい。(文・小川淳子)


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