徹底的に自分視点。ぶれずに、やりたいことを発信し続ける|たむらかえのB面
新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第14回に登場するのは、たむらかえさん。
B面では、YouTubeで自然な姿を発信しながらも、こだわりや軸を持ってチャンネルを運営するたむらさんのクリエイターとしての価値観に迫ります。

【たむらかえ】幼少期を海外で過ごし、東京学芸大学附属高校を経て東京大学理科一類に進学。理学部を卒業後、大学院修士課程を修了。在学中にYouTube活動を始め、お菓子作りをエンタメ化したユニークな企画で注目を集める。2023年にはサブチャンネルも立ち上げ、知性とユーモアを活かした発信で幅広い支持を獲得。特技はフルートや書道、趣味は映画や音楽など多彩。

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選択肢が多いのは疲れる。「ピンとくるか」を大事にしたい|たむらかえのA面


自分の視点が一番大事。好きだと思える動画を作りたい

ーアカウントを運営する上で最も重要だと考えていることは何ですか?

やりたいと思ったことしかしないことです。やりたくないことはやらない。自分が作った動画を好きになれないのが一番嫌なので、自分が好きだと思える動画を作ることを大切にしています。

ー好きだと思えるのはどんな動画ですか?

わざとらしくなく、普段通りの自然な自分であることと、間延びしないことです。
間延びすると疲れてしまって見ていられなくなるので、とにかくカットを優先しています。動画の長さが8分を超えると、途中に広告を入れられるようになって収益も上がりやすくなるのですが、たとえ7分45秒くらいのギリギリの長さでも、そのまま公開しちゃいます。

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ー「やりたいこと起点」を貫いているのですね。やりたいことを続けるうえで意識していることはありますか?

私は個人のYouTuberだからこそ、「私自身の視点」の動画であることが大きな特徴だと思います。事務所にも所属していないので組織などの枠もありませんし、YouTubeはテレビとも違うので、大衆からの受け取られ方ではなく、「自分視点かどうか」を徹底的に意識しています。

確信をもって、ぶれずに「面白い」を発信し続ける

ーインフルエンサー活動を始めてから一番大きかった挑戦は何ですか?

リアルイベントの開催です。チャンネルを始めて半年後に初めて開催し、コラボイベントを含めてこれまで4回開催していますが、未だに焦ります。お金を払って来ていただきますし、動画と違って編集もできないので、普段やらないことばかりで。それに、相談できる人もいないので、会場の手配から企画まですべて一人で考えないといけないのも、なかなか大変です。

ーイベントの回数を重ねる中で、どんなことを学びましたか。

ビビらずに、確信を持っていることが大切だと学びました。前回のトークイベントでは、みんなにウケていないような気がして焦ってしまい、30分くらい早く終わらせてしまったんですよ。

多分、私の動画を見てくれている人は、声を出して笑うというより、心の中で「面白いな」と思いながらニヤニヤしているタイプの方が多くて、それがイベント会場になると滑っているように感じてしまったんだと思います。


最近、いろいろな芸人さんの単独ライブを見ているのですが、「絶対に面白い」という確信や自信を持って話しているからこそ、笑えることもあるんですよね。私にはそれが足りなかったと気付きました。だから私も、確信を持って、自分のペースでイベントをやりたいと思っています。

ー失敗からの回復において、最も重要だと思う要素は何ですか?

焦らないことです。焦って普段と違うことをしたり、全部変えようとしたりすると、軸がぶれちゃうので。視聴者が飽きて離れていくこともあると思いますが、それでも自分がやりたいことを変わらず続けていれば、伸びる動画をポンと出して新しい視聴者が増えたり、コラボをきっかけに以前の視聴者が戻ってきたりすることもあると思うんです。だから焦らず、ぶれずにいることが大事だと思います。

遠い方がいい。クリエイターとファンの距離感

ー視聴者との繋がりを強化するために特に重要視していることは何ですか?

私は逆に、繋がりすぎないようにしています。もし大好きなインフルエンサーや有名人がいても、あまり会いたくないと思うんです。遠い方がいい。道でたまたま会ったらすごく嬉しいと思うんですけど、握手会があっても参加しない気がします。
ずっと他人でいる方がいいです。そう思うからこそ、視聴者に迎合して「みんな可愛い!すごい!」みたいに言って距離を縮めようとも思わないですし、私がファンに媚びている姿をファンも見たくないんじゃないかと思います。

ーファンからのフィードバックをどのように取り入れていますか?

取り入れるというより、判断の基準となるデータとして見ています。「好印象なコメントが多かったな」「マイナスな評価が多かったのは、ここがあまり良くなかったのかな」と振り返るくらいです。

だから「こういう企画をやってほしい」みたいなコメントがあっても、基本はやりませんね。そのコメントが頭の中に残っていて、そこからアイデアが浮かび、企画になることはあるかもしれませんが、それも無意識です。

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ー自分のやりたいことを起点に発信する中でも、より多くの人に見てもらうために取り組んでいることはありますか?

見るハードルを下げるようなサムネイルとタイトルにして、内容にはとことんこだわることです。基本的には動画の内容のネタバレのようなサムネイルとタイトルにして、作り込みすぎないようにしています。ただ、サムネイルとタイトルが刺さらなくても、中身が面白ければ切り抜きが伸びて流入してくれることもあるので、特に内容にこだわっています。

アイデアはいつも身の回りから

ーコンテンツのネタを選ぶ際の基準は何ですか?

日常の中で思いついたネタをメモしてストックしていて、その時の自分の気分に合ったものを選んでいます。あと、長尺の動画が続くのが嫌なので、動画の長さも意識して選んでいます。

ー視聴者の関心やトレンドをどのように把握していますか?

SNSを見て面白いと思うものがあれば参考にすることもありますが、基本的にはあまり気にしていないですね。気にしすぎても楽しくないので。
以前、初めて髪の毛を染めた時の親の反応の動画がバズったことがあったんですが、それもたまたま世間の流れに合って伸びたものでした。

ーコンテンツ制作のアイデアを得るためにどのような活動をしていますか?

常に何かに触れるようにしています。YouTubeや映画を見ている時に思いつくことが多いので、家では常に何かしら見ています。また、家にいるよりも外出時の方がネタを思いつきやすいので、外に出ることも多いです。

やりたいことがないと始まらない。企画起点のコラボ

ーコラボレーションを選ぶ際の基準は何ですか?

コラボレーションを前提に企画を考えるのは結構しんどいので、基本は私のやりたいことを起点にしています。例えば、複数人でやる企画を思いついて「この企画をやるならこの人たちだな」と思ってコラボする、というやり方しかしないです。

ーコラボレーションしたいブランドや企業はありますか?その理由も教えてください。

駿台予備校です。私自身がお世話になった母校で思い入れがあり、好きすぎてアルバイトをしていたこともあるんですよ。営業の電話をかけようとしたこともあったんですが、バイト先に電話するのが恥ずかしくてやめました(笑)。もしコラボできたら、校舎を借りて、当時の私の一日を再現するような動画を撮りたいです。


ー過去のコラボレーションで特に成功したと感じるプロジェクトはありますか?その成功の秘訣は何だと思いますか?

これまで自分のチャンネルで行ったコラボし案件は、就活エージェントの「アカリク」と語学学習アプリの「Duolingo(デュオリンゴ)」だけですが、どちらも上手くいったと思っています。

「アカリク」は、実際に就活エージェントの面談を受けるという企画で、大学卒業を控えていた当時の私と親和性の高い企画になりました。「Duolingo」は、大学時代の成績を公開して、語学が苦手だったことを切り口に、アプリを使って勉強してみるという企画でした。どちらも自然な流れで企画にできたことや、案件っぽさが出すぎず、ちゃんと内容があって面白い動画にできたことが良かったのではないかと思います。

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「面白い」と言ってもらえるクリエイターを目指して

ーこの先の目標や、こうなりたいという目標はありますか?

私が「面白い」と思う人に、「面白い」と思ってもらえるような存在になりたいです。昔から人に「面白い」と思われたい気持ちが強く、小学生の頃は将来の夢を「面白い人」と書いていたくらいで。「面白い」って褒められるのが一番嬉しいんですよね。でも、常に大爆笑をとるような人でも、ただ興味深い人でもない、自分が思う「面白い人」の理想像に近づきたい。だから、「これは面白い」と自分自身で納得できることをやり続けられたらと思っています。

あとは、リアルイベントに熱量を持って取り組めるYouTuberになりたいです。トークライブなどのイベントをして、それが毎回「面白かった」と思ってもらえるようにしたいですね。YouTuberのイベントとなるとファンミーティングのような形式が多く、それ以外のリアルイベントに強いYouTuberはまだ少ないと思うので、先駆けてやっていきたいです。


ー今後、新しく取り組みたいと考えていることを教えてください。

縦動画で面白いコンテンツを出したいです。どうしても、収益面や視聴者層を考えると、「縦動画はそれ専用にカロリー低めで作ろうかな」「切り抜きにしようかな」といった考えになりがちですが、手を抜かずに、ちゃんといいものを作れるようにしたいと思っています。

最近は、あまり内容のない縦動画が多い印象があって、そればかりが流れることで、若い人たちがどんどん面白くなくなっちゃうんじゃないかとちょっと怖くて。だからこそ、内容があって面白い縦動画を出せるようになったら、社会にとっても意味のあることなんじゃないかと思うんです。

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ー自分自身の成長や革新性を維持するために日常的に行っていることはありますか?

今まで自分が触れてこなかった、新しいものに触れるようにしています。学生時代は勉強してばかりでしたし、「流行りのものなんて別にいいや」と思って、みんなが通ってきたドラマや映画などのコンテンツに、ほとんど触れてこなかったんです。今はクリエイターとして、そういったものをちゃんと見ておきたいと思い、これまで通り過ぎてきてしまったものを、少しずつ吸収しているところです。

自分が「やりたいこと」「面白いと思うこと」にこだわりを持っているたむらさん。実際に動画を見てみると、他のチャンネルにはない「たむらかえらしさ」が一貫してあるように感じられる。人からの見え方や評価を気にしがちな現代、そのぶれなさがある種の安心感となり、ファンの心を掴んでいるのかもしれない。とにかく一貫して発信し続けてきたことで、たむらさん自身のブランドが作り上げられ、ファンが根付き、広がってきているのだろう。

文:安藤 ショウカ
写真:小笠原 大介

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