政策アナリストの石川和男が5月25日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。実質賃金がプラスに転じない現状について「過去最高益を出した大企業から中小企業にまわっていない。

大企業がやらないなら、政府がやる」と述べ、大企業への課税強化も視野に入れた対策をとるべきとの認識を示した。

大企業から中小下請けへ回らない利益 「あんたたちがやらないな...の画像はこちら >>

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厚生労働省が5月23日に発表した2023年度の毎月勤労統計調査によると、物価変動を反映した労働者1人当たりの実質賃金は、前年度と比べ2.2%減少し、2年連続でマイナスとなった。名目賃金に相当する現金給与総額は3年連続の増加となったが、円安による物価高に賃金の上昇が追い付かなかった。

実質賃金がプラスに転じない要因のひとつについて、石川は「何兆円もの過去最高益を出した大企業から、下請け、孫請けの中小企業に同じように利益が行っていますかというと、数千億円レベルでしか行っていない」と言及。ゲスト出演した岩手保健医療大学理事で経済評論家の濵田敏彰氏も「公正取引委員会の指導を受けた大企業でも、いまだに公然と“下請けいじめ”が行われている」と指摘し、大企業から下請け企業への利益分配が十分に行われていないことを問題視。
そのうえで石川は「結局、あんたたち(大企業)がやらないなら、政府がやっちゃうからねとなってしまう。

大企業に対して税金をかけ、それを国が徴収して中小企業対策としてばらまく……こういう発想になってしまう。やや統制経済っぽく聞こえるが、それくらいやらないと、いつまで経っても大企業の内部留保が中小まで回って来ないといった議論が続き、賃金に反映されない」と主張した。

また濵田氏は、物価高の要因として挙げられる円安について、日米の金利差だけが原因ではなく、財政への懸念や国民一人当たりのGDPの伸び悩みなど「国力の低下」も背景にあるとして「みんなが今日より明日の賃金が上がると思える状態にならないと、お金を使わない。そうしないと、日本のGDPも伸びない。結局、国力にも影響してくる」と国民全体の賃金底上げが重要だとの認識を示した。