『あの頃 - 単行本未収録エッセイ集』(中央公論新社)著者:武田 百合子Amazon |honto |その他の書店
武田百合子のエッセイを読むのが好きだった。なかでも『犬が星見た――ロシア旅行』は忘れがたい。
夫・泰淳と竹内好との3人旅の記録。百合子のエッセイは「全作品」にまとめられていると思っていたが、単行本未収録のエッセイがあったらしい。この本はそれらを百本ほど集めた。

人物を活写した文章。食べ物をさらりと独特の比喩で切り取る筆の冴え。武田泰淳はもちろんのこと、色川武大や正宗白鳥、梅崎春生やデヴィッド・ボウイまで、著者は鮮やかな手つきで切り取り、手品のように読者の前に提示する。


昔の知り合いにばったりと街で出逢ったような、不思議な懐かしさがある。編んだのは、娘で写真家の武田花。

【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。
その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。

【初出メディア】
日本経済新聞 2017年6月8日

【書誌情報】
あの頃 - 単行本未収録エッセイ集著者:武田 百合子
編集:武田 花
出版社:中央公論新社
装丁:単行本(533ページ)
発売日:2017-03-21
ISBN-10:412004968X
ISBN-13:978-4120049682