しかし、時代の構造的な逆風により「あのとき正社員になれていれば」と、キャリアや人生に深い後悔を抱えている人も少なくありません。
グロービス経営大学院教授・森暁郎氏は、著書『世の中のことも自分のこともみるみるわかる お金の「選択」 人生の節目に役立つファイナンス超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、そんな氷河期世代にこそ、ファイナンス思考を使った「逆転の戦略」があると指摘します。
過去の執着を断ち切り、人生の後半戦で勝つためのエッセンスを抜粋・編集して紹介します。
■氷河期世代はどう生きていくべき?
「氷河期世代」。この言葉から、どんな印象を持ちますか?
一般的には、バブル崩壊後の1990年代半ばから2000年代半ばに社会へ出た、いわゆる就職氷河期世代を指します。当時は景気の低迷で新卒採用が大幅に絞られ、多くの若者が思うように就職できませんでした。
私自身もこのど真ん中の世代ですが、どこか寒々しい響きで、正直あまり好きな言葉ではありません。そもそも「世代」で括られること自体にも違和感を覚えます。
■社会の中核となった 「氷河期世代」
近年、この氷河期世代に改めて注目が集まっています。
就職難の時代を生きたこの世代も、いまや40代半ばから50代半ば。人口も多く、社会の中核を担う世代です。
この層が不安定だと、社会保障を支える立場としても、消費を動かす存在としても、日本経済が停滞しかねません。だからこそ、今こそ手を打つ必要があるのです。
また、社会がこの世代を放置したまま「あとは自己責任で」と言うのは酷な話です。
氷河期世代は他の世代に比べ、キャリア形成や資産形成の機会に恵まれず、結婚や出産といったライフイベントをあきらめざるを得なかった人も少なくありません。
それは決して能力や努力の問題ではなく、バブル崩壊後の長期不況で企業が採用を極端に絞り、非正規雇用が急増したという、構造的な環境要因によるものです。
その“時代の構造的な逆風”こそが、氷河期世代の出発点を不利にしたのです。
しかし、嘆いていても何も変わりません。
ファイナンスの考え方を使って、逆転の人生を描いていきましょう。
■サンクコスト——「過去への執着」 を断ち切る
氷河期世代にとって最大のサンクコストは、「失われた20年、30年への後悔」です。
「あのとき正社員になれていれば」「もっと早く投資を始めていれば」といった“if”の思考は、どれだけ嘆いても1円にもなりません。
また、「ここまで我慢したんだから、この会社を辞めるのはもったいない」という考えも、サンクコストの罠です。
まずは、この「過去への執着」というサンクコストをきっぱりと切り捨てることから始めましょう。判断基準は常に「過去より未来」です。
■機会費用——「何もしない」 ことが最大のリスク
サンクコストと対になるのが、「機会費用」です。
氷河期世代はリスクを恐れて現状維持を志向しがちです。現状維持も一つの選択ですが、ファイナンスの考え方では、そこには必ず機会費用が発生します。
たとえば「給料には満足していないが安定している」という理由で、今の仕事にしがみつく場合。その選択によって失っている機会費用は何でしょうか?
転職や学び直し(リスキリング)で得られたかもしれない月収の増加、新しいスキル、人とのつながり、やりがい。あるいは、低金利の預金に全財産を置いている人は、「投資していれば得られたであろう年利5%のリターン」という機会費用を失っていることになります。
これからの時代、「何もしないこと」こそが最大のリスクになるのです。
■非財務資本——氷河期世代の最大の武器
氷河期世代には、他の世代にない強みがあります。
それが、困難な時代を生き抜く中で築いた「非財務資本」です。
・困難な環境を生き抜いた「サバイバル能力」
・理不尽をくぐり抜けて磨かれた「調整力・レジリエンス(回復力)」
・苦楽を共にした仲間との「関係構築力」
これらは、誰かに与えられたものではなく、氷河期世代が歯を食いしばって積み上げてきた無形の資産です。
自分の中にあるこの「非財務資本」を棚卸しし、言語化して再認識すること。
それこそが、これからの人生を戦うための最強の“元手”になるはずです。
そしてそれらを磨き続けることが、「PBR1倍超え人材」への第一歩となります。
■人生の 「コールオプション」 を買い続けよう
最後にもうひとつ、ファイナンス理論から学べる重要なコンセプトを紹介します。
それが「コールオプション」です。コールオプションとは「将来、ある資産を決まった価格で買う権利」のことです。
たとえば、ある投資家が、現在1000円のABC株式会社の株価が将来大幅に上がると予想しているとしましょう。そこで、この株式のコールオプションを1株あたり50円で購入します。
予想どおり、1か月後に株価が1200円に上昇した場合、この投資家が「1100円でABC株を買う権利」を持っていると、当然権利を行使します。
結果として、1200円の株を1100円で手に入れられて、即売却すれば100円儲かります。
逆に株価が上がらなければ権利を放棄すればよく、損失は支払った50円のオプション料のみ。
つまり、「損失は限定的(コールオプションの購入費用のみ)、利益は青天井」という非常に魅力的な打ち手なのです。
この考え方を、人生に応用してみましょう。
人生の後半戦に大きな博打を打つ必要はありません。
この時期にとるべきは、“小さく失敗して大きく当てる”戦略です。
たとえば、次のような行動です。
・週末だけ副業を試す
・異業種交流会に参加してみる
・学校OB・OG主催のゴルフコンペに顔を出す
・興味のある分野の本を一冊読んでみる
その多くは、費用だけ払って終わる「権利放棄」になるかもしれません。
しかし損失は限定的で、金額も確定しています。そこからあなたの天職につながる人脈やアイデアに出会う「大当たり」につながることもあるでしょう。
氷河期世代は、努力が報われない状況が続くなか、知らず知らずのうちに「失敗しない」行動パターンが染みつきがちです。しかし、これからの人生は「小さく失敗して大きく当てる」コールオプション戦略こそが、逆転の鍵となるはずです。
■「氷を溶かす世代」へ
氷河期世代は、どんな順風満帆な世代も持たない「打たれ強さ」と「現実を見つめる目」を培ってきました。これこそが、不確実な時代を生き抜くために必要な、最強の「非財務資本」です。
サンクコストはきっぱりと手放して、自分の中に築いてきた非財務資本を再認識し、そして小さなコールオプションを買い続ける——人生の後半戦では、非財務資本の力を存分に解き放ち、氷を溶かすように、自分の可能性を熱く燃やしていきましょう。この書籍の執筆者:森 暁郎 プロフィール
グロービス経営大学院 教授。慶應義塾大学経済学部卒業、コロンビアビジネススクール修了(MBA) 三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。国内及びニューヨーク支店にて、シンジケートローン等の営業及び審査業務に従事。
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