SNS上でいま、大きな話題になっているのが大学入試における「女子枠」です。理工系学部における女子学生の割合の低さを改善するため、総合型選抜や学校推薦型選抜で女子枠を設ける大学が増えています。


それに対して「女子だけしか受験できない入試があるのはおかしい」という批判も起き、2026年3月の国会でも取り上げられ議論を呼びました。

この女子枠で特に注目されているのが東京科学大学です。同大の2026年度入試における理工系の定員は約1000人で、そのうち女子枠は154人(予定)に上ります。

定員の10%以上が女子枠となったことで一般選抜の定員が減り、共通テストのボーダーが高騰。結果として、2次試験の受験すらできない受験生が増える事態となりました。

「女子枠がなければ自分も受験できたのに」と悔やむ受験生も現れており、女性のみが出願できる入試制度への風当たりは強まっています。

■男子は大半が公立出身、一方で「女子枠」の学生は……
「数学が得意だったので東京科学大学を受験して入学した」と話すのは、同大の現役女子学生であるヤスダさん(仮名)です。

高校時代は公立高校の理系クラスで過ごしました。クラスの大半は男子でしたが、女子も10人ほどいたと言います。

「理系の女子は医学部や薬学部、看護学部を希望する子たちでした。私も高校1年の頃は医学部希望でしたが、首都圏の国公立医学部に進学するほどの学力はないと分かり、理工系に志望を切り替えました」

数学の強みを生かせる同大の入試を担任や予備校から勧められ、見事合格。高校時代から「男子が多い環境」にいたため、大学もその延長だと思っていました。
実際、理工系は公立高校出身の男子が多く、高校時代と同じ雰囲気で「楽」だと感じているそうです。

しかし、女子学生のコミュニティーに足を踏み入れると、戸惑う事態になりました。

■女子のほとんどが女子枠入学者
「女子学生の過半数が女子枠で入学しているんですよ。一般選抜は少ないんです」

入試形態が違うことへの反発自体はないと言います。

「高校の同級生も総合型選抜で旧帝大へ進学しましたが、すごく成績がよかったです。難関大に入る推薦や総合型選抜の人は、優秀な人ばかりだと思っています」

ただ、東京科学大学の「女子枠」で入ってきた学生たちは、明らかに自分とは雰囲気が違うとも語ります。

「女子枠の入学者は、私立の中高一貫校出身者が多いですね。男子は公立出身が大半ですが、女子は私立出身がほとんどに見えます。私たち公立組とは、まとっている雰囲気が全く違うんです」

■「中学受験」の話題で広がるカルチャーショック
どんな雰囲気なのか、ヤスダさんは幼少期の記憶を振り返ります。

「小学校の頃、近所の医者の娘がSAPIX(サピックス)に通っていて、夜、車の後部座席で毛布にくるまって帰ってくるのを見かけました。『過保護に、大切にされている子がいるんだな』と印象に残っていたのですが、女子枠の子たちからは、あの子と同じ匂いがするんです」

ある時、女子同士で話していると、中学受験の話題で大いに盛り上がったそうです。

「SAPIXとか早稲田アカデミー、日能研。
みんな小学4年から塾に通って私立に入って、中学に入ってもまた塾に通っていたそうなんです。『SEG』という数学専門の塾の塾名も、私は聞いたことがありませんでしたが、女子枠の中には通っていたという子が複数いました」

気になってバイト先の中高一貫校出身の男子に「SEGってなに?」と尋ねると、「東大や医学部を目指すやつが通うブランド塾。俺の同級生も親に入れられたけど、ついていけなくて辞めてた」と教えられました。

■「楽して合格」の批判に傷つくお嬢様たち
「SNSでは『女子枠の子たちは楽して大学に入っている』と叩かれていますが、実際にはその逆じゃないかと思います。『小学校の頃からそこまで勉強して、なぜ私と同じ大学!?』と感じてしまうほどです。

私なんて小学校の頃は毎日、公園でヤモリを捕ったりゲームをしたりしていました。中学3年の夏からようやく塾に通って高校受験をして、大学受験も直前期しか塾に行っていません。大学の同級生男子もオール公立なので、小学校から塾に通っていた子なんてほとんどいませんしね」

そのため学内では、自分の立ち位置を「塾漬けお嬢様たちに寄り添う庶民」と捉えているそうです。

女子枠で入学した学生は育ちがいい分、幼いのでケアを気遣う場面もあり、大変さを感じるそうです。
 
今回は東京科学大学へ一般選抜で入学した女子学生ヤスダさんが「女子枠合格者陣」との出会いによるカルチャーショックについて紹介しました。

中学3年と高校3年の受験直前期しか塾に通っていない自分からすると、「女子枠入学組は、幼い頃から勉強をしてきたエリートに見える」とのことです。

この記事の執筆者:佐藤れん プロフィール 
受験業界に身を置く教育ライター。
専門はジェンダーと大学受験。かつては大学の非常勤講師をしていたことも。
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