■Q. 最近ニュースで耳にする「ゾンビたばこ」って何ですか?
Q. 「SNSやニュースで『ゾンビたばこ』という言葉をよく見かけます。普通のたばことは何が違うのでしょうか? 体にどのような影響があるのか教えてください」
■A. 「エトミデート」を含む電子タバコの俗称で、乱用が問題になっています
「ゾンビたばこ」とは、指定薬物である鎮静剤「エトミデート」を混ぜたリキッドを使用する電子たばこの俗称です。
エトミデートの乱用は香港や台湾で問題となっていましたが、近年では日本でも広がりつつあります。特に10~20代の若者の間で密売されるケースが増えているようです。
エトミデートは、本来は全身麻酔や鎮静の導入に使われる短時間作用性の静脈麻酔薬です。1964年にベルギーで合成された薬で、中枢神経を強く抑制し、意識を失わせる作用があります。
日本国内では現在も未承認のため、正規の医療現場では使用されていませんが、欧米の医療現場では広く使用されてきた歴史があります。エトミデート自体が悪い薬物なのではなく、違法な使い方が問題であるという点は、ぜひご理解ください。
エトミデートを乱用すると、頭がぼんやりし、いわゆる「陶酔感」を覚えます。乱用者がフラフラと歩いたり、小刻みに震えたり、立ったまま意識を失ったりする姿がまるで「ゾンビ」のように見えることから、「ゾンビたばこ」という俗称が広まったようです。
2025年、日本においてエトミデートは「指定薬物」に指定され、購入・所持・使用が禁止されました。しかし、成分を少しだけ変え「違法ではない」とうたう新たな亜種が次々と現れます。
「まだ規制されていないから安全」「今は合法らしいから危険ではない」ということは決してありません。興味本位で一度でも手を出すと、依存症に陥ったり、取り返しのつかない後遺症を負ったりするリスクを伴います。
薬は医療機関で正しく使われてこそ、安全に効果を享受できるものです。私たち一人ひとりが危険性をしっかりと認識することが大切です。
▼阿部 和穂プロフィール薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
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