夏に向けて体を絞りたい時期。とりあえず手軽な「糖質制限ダイエット」をすれば、一時的に体重は落とせます。
しかし、糖質制限を緩めた途端にあっさりリバウンドし、次はさらに厳しく糖質制限をしてもなかなか痩せなくなってしまいます。

何度も頑張るほど、痩せにくい体になってしまうのはなぜでしょうか? そのメカニズムと失敗しないダイエットのコツについて、分かりやすく解説します。

■ご飯を抜いて痩せるのは「糖質制限」ではなく単なる「カロリー制限」の結果
糖質制限ダイエットでよく見られるのは、「定食でご飯を食べない」といった手法です。確かにこれをしばらく続ければ、体重は減ります。しかしそれは糖質制限そのものの効果というより、「摂取カロリーが減っただけ」の結果で、当たり前とも言えます。

30~40代の成人男性の1日摂取カロリーの目安は約2500kcalです。お茶碗1杯(約150g)の糖質は約50gで、エネルギーは約250kcal。3食抜けば1日約750kcalが減らせ、1日の摂取カロリーは1750kcalになります。これは一般的に推奨されるダイエット中の摂取カロリーと大差ありません。「糖質制限」といいつつ、実際には「単なるカロリー制限ダイエット」を行っている状態なのです。

■体重減少効果は出やすい一方、すぐにリバウンドする糖質制限ダイエット
「バランスよく食べながらカロリーを減らすメニュー」を実践するのは、現実的にはかなり難しいものです。一般的な糖質制限ダイエットは、「ご飯やパン、麺類をやめ、甘いものを断つ」という手法をすすめています。
シンプルで分かりやすいため、多くの人に広まったのでしょう。

私は現在ケトン食の研究を進めていますが、研究を始める約14年前に糖質制限食を実践したことがあります。効果は割と早く出て、1カ月で3~4kg痩せることができました。しかし、この方法はダイエット期間中は満腹感が得られず、非常にストレスがたまるものでした。

そして制限を緩めた途端に、あっという間に元の体重に戻ってしまいました。いわゆるリバウンドです。慌てて再び糖質制限を始めましたが、今度はなかなか痩せません。神経質に糖質量にこだわっても、うまくいかないのです。それはなぜか? これには私たちの体の仕組みが関係しています。

■糖質制限ダイエットは、体にとって「飢餓」のような緊急事態
ダイエットを頑張るほど太りやすい体に!? 糖質制限ダイエットで痩せても「リバウンド不可避」になる理由
糖質制限で体は飢餓状態と認識(オリジナル画像)

糖質制限ダイエットを行っているとき、頭では「健康のためにダイエットをしている」と思っていても、体は「命に関わる緊急事態」と感じます。急激に摂取カロリーが減り、糖質も不足するため、体は現代の日本では稀な「飢きん」にあったような反応を示すのです。

人間の体には、飢餓に備える強力な仕組みが備わっています。


▼糖の再吸収飢餓状態で働きが強まるのが、腎臓が糖を尿から排出した後で、糖を再吸収する仕組みです。糖質制限により摂取する糖を減らすと、体が飢餓状態になるのを防ぐために、腎臓は糖をより効率よく再吸収し、体内にとどめようとします。

▼「糖新生」と筋肉の減少肝臓では、アミノ酸を材料に糖を作る「糖新生」が起こります。アミノ酸を供給するために、筋肉が分解されます。筋肉量が減少します。

筋肉が減少すると代謝が落ち、必要エネルギーが減少します。そのため、いわゆる「脂肪が燃えにくい体」になっていきます。さらに、筋肉が糖をグリコーゲンとして蓄積する機能が低下するため、余った糖質が中性脂肪となり脂肪に蓄積することになります。

■ダイエット失敗の原因は「意志の弱さ」ではなく「生存本能」の結果
「筋肉は減り、脂肪が増え、さらに代謝は低下する」という体の仕組みこそ、糖質制限ダイエットで一時的に痩せても、あっという間にリバウンドする正体です。

ダイエットをするたびにリバウンドをして、自己嫌悪に陥ってしまう方も多くいらっしゃるでしょう。しかしリバウンドをしてしまうのは、あなたの意志が弱いからではありません。脳が「このままでは飢え死にする」と判断し、生存本能として強力なブレーキをかけた結果なのです。
命を守ろうとする生存本能に、根性論で立ち向かうのは不可能です。

■失敗しない効果的なダイエットはリバウンドを防ぐ「ケトン代謝」への切り替え
では、失敗しないダイエットはどうすればいいのでしょうか? 重要なのは、体が飢餓を感じないように、適切なカロリー設定をしていくことです。そして筋肉量を減らさないために、タンパク質をしっかり取ります。カロリーを補うために、脂質、特にケトン体を誘導する作用のある中鎖脂肪酸(MCT)を使っていくことも大切です。中鎖脂肪酸は、ココナッツオイルなどに豊富に含まれます。

人には、糖をベースとした代謝経路とは別に、ケトン体をベースとした代謝経路が備わっています。「ケトン体代謝」は、特に睡眠中など糖を摂取していない時間帯に働き、体の修復を支えるエネルギー代謝です。14年に及ぶ研究からも、この代謝経路を意図的に活用することで、筋肉量を維持しながら脂肪量を減らし、リバウンドしにくいダイエットが可能になることが確認できています。

ポイントは、糖質を抑えながらも、脂質とタンパク質でカロリーを摂取するケトン食を中心に進めること。ビタミン、ミネラル、鉄、アミノ酸のバランスも考えていくことが大切です。

短期的な体重減少だけを目的に、糖質制限によって「太りやすい体」をつくってしまうダイエットは、医学的にもおすすめできるものではありません。筋力を維持しながら、健康的に継続できる知識と正しい実践方法を取り入れて、健康的で失敗しないダイエットを始めましょう。


▼萩原 圭祐プロフィール先端医学と食でレジリエンスを高め、健康寿命と成長を見守る内科医。大阪大学先進融合医学共同研究講座特任教授として先端医学から伝統医学、レジリエンス・ケトン食などの研究活動に携わった後、現在はそれらの社会実装に精力的に取り組んでいる。
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