自動車盗難は4年連続で増加し、その受け皿として疑われるのが、郊外に点在する中古車ヤードだ。とりわけ千葉では、外国人が運営するヤードが集中し、盗難車の解体や不法滞在者の出入り、騒音や不法投棄などをめぐって住民トラブルが絶えないという。
記者が現地を歩くと、見知らぬ来訪者を警戒する作業員たちが即座に取り囲み、周囲の住宅地では「役所も警察も動けない」と嘆く声が上がっていた。合法と違法の境目すら曖昧な“ヤード地帯”の実態を追った。

自動車盗難の認知件数は4年連続で増加

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警察庁によれば、自動車盗難の認知件数は’22年から4年連続で増加。’25年は6386件と過去最多に迫る。フェンスに囲まれた自動車ヤードは盗難車の解体・輸出の拠点となりやすいのも事実だ。
 
’25年末現在、全国約3100か所の自動車ヤードのうち、千葉県には最多の約760の業者が集中。県警によれば、その8~9割が外国人の運営するヤードで、四街道市、佐倉市、八街市などを含む印旛地区に集まるという。千葉県議の時代に、この地区が選挙区だったため、ヤード問題に熱心に取り組んできた田沼隆志氏が解説する。

「解体作業に必要な広い土地が安価で、中古車のオークション会場や輸出するクルマを港に運搬する高速道路も近いことが大きな要因です。また、首都圏に近いので中古車の“出物”も多い。外国人が多いのはキツい肉体労働であり、汚れるし、危険な『3K仕事』を日本人が敬遠するという部分もあるでしょう。もちろん適切に運営している外国人も多いですが、日本人は介入しにくく、犯罪の温床になりやすいのは事実です」

違法ヤードがはびこる要因は…

日本は中古車の3分の1を海外に輸出し、世界シェア30%超を占める中古車輸出大国だ。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が話す。

「海外ではこの地域のヤードから輸出された中古車が人気で、『メイド・イン・佐倉』『メイド・イン・四街道』とブランドになっているほど。
近年は、軽自動車や旧車が世界的人気で円安のため需要に拍車がかかり、中古車の仕入れ相場が高騰。国内販売向けの業者が手を出せなくなる一方、外国人はビジネスをしやすく、違法ヤードがはびこる一因にもなっています」

日本人の来訪を警戒!外国人ヤードの裏事情

「撮った写真を消せ」千葉に密集する“外国人ヤード”の不気味な実態。急増する自動車盗難“受け皿”の可能性も
山武市の自動車ヤード。鉄板を打ちつける金属音や、外国語で男性たちが声を張り上げながら会話する様子が聞こえた
4月の土曜日、記者は現地に向かった。八街市の自動車ヤードには「中古車販売」ののぼりがはためき、状態の良さそうな国産車が整然と並ぶが、ナンバープレートは付いていない。敷地に近づくと、急に外国人が怪訝そうな顔で歩み寄ってきた。

「クルマはすべてバングラデシュとドバイに輸出していて、国内には出してない。社長はバングラデシュ人で、作業員はほとんどスリランカ人。ウチはオークションで仕入れているから大丈夫。でも合法か違法かは見分けがつかない。この辺りのヤードには不法滞在者がゴロゴロいるし、盗難車をつかまされたら大変だよ。買う前に確認する方法はないんだけどね」

慌てて出てきたのはなぜかと問うと、声を潜めた。

「見慣れないクルマや人が来ると、コミュニティ全体が敏感に反応する。入管(出入国在留管理庁)の摘発を警戒しているからね」

周囲を分譲住宅に囲まれた外国人ヤード

合法業者と名乗りながら、なぜ入管を恐れるのか。釈然としないまま次に向かったのは山武市のヤードだ。里山の林を縫ってクルマを走らせると、周囲を分譲住宅に囲まれた外国人ヤードが現れた。
敷地は800㎡ほどと広大で、周囲の道路脇には、何年も雨露に晒された自動車のスクラップが何台も放置されている。

土曜日だというのに、解体作業の大きな騒音が聞こえる。記者の姿を見つけて、怪しむように出てきた外国人に「クルマを探している」と伝えると、バングラデシュ人だという社長はこう答えた。

「セダンならプリウス、ミニクーパーもあるよ。走行距離5万㎞で事故車でもない。100万円でいいよ。仕入れたのはオークション。盗難車なんて扱ってないよ」

穏やかに話す一方で、記者を3人の作業員が取り囲み、警戒している様子が伝わる。別の作業員は、なぜかフォークリフトをフォークリフトでけん引し、このヤードに向かう道中では2台のクルマを積み木のように荷台に重ねて運搬するトラックに遭遇した。もちろん道交法違反だ。

警察も手の打ちようがない

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八街市の自動車ヤード。整然と並べられた手前側とは対照的に、奥には部品が取られたクルマの残骸が積まれていた
隣接する住宅に暮らす女性は、こう溜め息をついた。

「ヤードができたのは、10年ほど前。以来、土日も構わず作業をするので、騒音にうんざり。
平日には鉄板を切り裂く耳障りな音や、爆音がしたことも。振動もすごいし、何かを燃やした煙で窓を開けられない日もある」

行政は対策に乗り出さないのか。女性が話す。

「役所や警察に何度通報しても、何も変わらない。ヤードの周囲の道路にトラックを止めっ放しにして、住民のクルマが通れないこともしばしば。盗難車を持ち込んだこともあって、逮捕者も出している。警察の話では、あのヤードには5~6の業者が入り、コロコロ経営者が代わるので手の打ちようがないみたい」

地域の外国人事情に詳しいスリランカ人実業家によれば、「短期ビザで来日して、ヤード経営に乗り出し、中古車やバラしたパーツをコンテナに詰めて、ビザが切れる3か月後にコンテナを輸出すると帰国してしまう外国人もいる。盗難車だったとしても、コンテナに詰められたらわからない。経営者は外国人で、働いているのは日本人という自動車ヤードもある。入管の摘発と近隣トラブルへの対策でしょうね。利口なやり方です」

条例の規制が緩く事実上の野放し状態

四街道市には約1000人と、日本最多のアフガニスタン人が暮らし、大多数がヤードの解体業に従事する。そんなヤードの一つを訪れ、敷地外から写真を撮っていると作業員が詰め寄り、「撮影をやめろ。
撮った写真を消せ!」と凄んできた。後ろ暗いところでもあるのだろうか。

今回、取材した外国人ヤードは、どこも警戒心を剝き出しにしていた。なかには、犯罪に手を染める外国人がいるのかもしれない。

「ヤードの運営には行政への届け出が必要ですが、不備がなければ原則、受理されるので、届け出したヤードが合法とは限らない。つまり、合法か違法かを区別するすべがないのです。千葉県は全国に先駆けてヤード規制条例を施行したが、目的は犯罪の取り締まりというより、近隣への迷惑防止でしょう。確たる証拠がなければ警察も立ち入りできず、事実上、無法地帯となっています」(前出・加藤氏)

今後も、ヤードを舞台にした犯罪が続きそうだ。

【元衆議院議員 田沼隆志氏】
日本維新の会所属。千葉市議、衆院議員、千葉県議を歴任。「ヤードの田沼」と呼ばれるほどヤード問題解決に尽力
「撮った写真を消せ」千葉に密集する“外国人ヤード”の不気味な実態。急増する自動車盗難“受け皿”の可能性も
元衆議院議員の田沼隆志氏
【自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子氏】
業界紙・日刊自動車新聞社を経てフリー。ビッグモーターの不祥事ではスクープを連発。
一日2記事を目標に精力的に活動する
「撮った写真を消せ」千葉に密集する“外国人ヤード”の不気味な実態。急増する自動車盗難“受け皿”の可能性も
自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏
※2026年4月28日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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