元内閣官房参与で経済学者・髙橋洋一氏は著書『60歳からの知っておくべき財政学』の中で、表向きの報道では決して語られない「天下り」の最新手口に触れている。今回は本書から一部抜粋し、ガバナンス強化の象徴である「社外取締役」が官僚の集金装置と化している実態について解説する。
■「社外取締役」は官僚が編み出した天下り新手法
財務省はなぜそこまでして天下りに必死になるのか。理由は極めて単純かつ深刻である。天下りは官僚にとって莫大な報酬と強力な利権を生む第2の人生であり、財務官僚がその仕組みを維持すれば組織権力を強化できるからだ。
2024年8月26日の『ダイヤモンド・オンライン』には、財務省出身の社外取締役報酬ランキングが掲載されていた。約100人が取り上げられていたが、筆者はその全員を知っている。「こんなにもらっているのか」と驚きながら眺めたものだ。
官僚と天下りは切っても切れない関係にあるが、そのなかでも元財務官僚の待遇は群を抜いている。
第1次安倍政権では天下り規制が行われ、一時的に天下りは減少したが、その後復活してかたちを変えて繁茂している。特殊法人などの古典的な天下り先は資金面で苦しいところも多く、潤沢な報酬を期待できない。
社外取締役とは一般的に、取締役会の一員として企業経営を客観的な視点から監督する役割を担う。元財務官僚が天下る先は規制業種など、財務省に逆らいにくいところが中心だ。社外取締役制度を利用しながら、実質的には巨額の報酬を受け取る仕組みを確立したのである。
■報酬はどこへ? 一度食べたら逆らえない「毒まんじゅう」
さらに悪質なのは、天下りによって得られる高額報酬が、最終的には政治家への“寄付”として流れていく点である。
天下った官僚は使いきれないほどの報酬を受け取り、その一部を自民党総裁選の候補者などに寄付する。表向きには個人の支援活動のように見えるが、実際は利害関係の取引である。政治家もその資金を当てにしているため、天下りを積極的にやめようとはしない。
官僚は利権を維持し、政治家もその恩恵を受ける――こうして両者が共存する構造ができあがり、そのなかで誰も天下りにメスを入れようとはしない。筆者は、この報酬を“毒まんじゅう”と考えている。
財務官僚が天下りで甘い報酬を受け取れば、それ以降は財務省の意向に逆らえなくなるからだ。
筆者自身も財務官僚時代に「ここに行ったらどうか」と何度も天下りを勧められたが、決して受けなかった。
実際、天下りした元官僚は財務省への恩義から、財務省に不利な情報を決して外部に漏らさない。それだけ財務省は強力な統制力を保っているのである。
■まだいる共犯。日本社会を蝕む「相互利得」の三角利権
天下り先としてもう1つ、「民間企業の顧問」がある。顧問とは一般的に、特定分野において専門知識などに基づき助言する立場で、日々の業務執行への直接的関与はない。
社外取締役の報酬は公開情報で表に出るが、顧問報酬はほぼ公開されない。顧問報酬は経費扱いとなるため、上場企業であっても公表の義務がないからだ。
その結果、社外取締役報酬+顧問報酬で、公開情報よりはるかに多額の報酬を得ているケースも見られる。しかも、財務省の天下りには役所時代の序列がそのまま持ち込まれる。
事務次官経験者で社外取締役報酬が低い場合は、むしろ高額な顧問報酬を受け取っている可能性がある。天下り人事そのものを財務省が取り仕切っているため、そのあたりも配慮されている。
実際、天下り官僚は民間企業でどんな仕事をしているのかといえば、答えは簡単で基本的には何もしていない。月に一度、午前か午後のわずかな時間だけ車で送迎されて出社、帰宅するだけである。
元財務官僚の顧問が下手に張り切って業務に口を出すと、社内の意思決定が乱れる。財務省のコネを得るために天下りを受け入れる側としても“お飾り”でいてくれたほうが、企業にとっても都合がいい。もし本人がやる気なら、月に1度、講演会のような場を設けて満足して帰ってもらうよう取り計らうだろう。
社外取締役の枠には元財務官僚だけでなく、財務省に近い学者やマスコミ関係者も多く含まれている。学者の場合、財務省に協力的な論文や発言を繰り返すことで“財務省の犬(ポチ)”となり、退官後に社外取締役などのポストを得る。マスコミ関係者も例外ではない。財務省の審議会委員に起用された者が、退任後に同様の報酬を得るケースもある。
要は財務省、学者、マスコミの三者が相互に利益を与え合う三角利権構造ができており、これが日本社会の知的腐敗を招いている。
社外取締役制度は本来、経営の監視を第三者が強化し、ガバナンスを向上させるための仕組みである。しかし実際には、元財務官僚を入れておけば第三者構成を満たすという建前に利用されている。
髙橋 洋一(たかはし・よういち)プロフィール
1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(内閣総務官室)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。2008年退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。
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